大きな音で鳴り響く雷。犬にとっては「恐怖の音」でしかありません。なかには雷の音を聞いて異常な恐怖反応を引き起こす犬もいるほど。雷に怯える犬を落ち着かせる方法はあるのでしょうか。
犬が雷を怖がる理由とは?
大きな雷の音が鳴ると、人間の大人でさえビックリしますよね。
自然界の中で最も大きな音が雷の音だといわれています。その音の大きさはなんと、120デシベル!!飛行機のエンジン音を間近で聞くのと同じぐらいだとされています。
そんな大きな音を、聴力が発達している犬が聞いたらひとたまりもありません。雷の音に怯えたり、吠えたりする犬も多いのではないでしょうか。
そもそもなぜ、犬は雷を怖がるのでしょうか。実は以下の要因が考えられています。
- 雷の音や光が怖い
- 気圧の変化
- 静電気による不快
- 雷雨によるオゾンのにおい
もちろん、犬によって何に対して恐怖を抱いているのか異なるため、愛犬の様子をよく観察しながら、不安要素を取り除いてあげることが大切です。
犬が怖がる時に見せる仕草や行動
雷の音や光を見た瞬間、怯えたりパニックになったりする犬がいます。これは「雷恐怖症」と呼ばれるもので、稲妻や雷鳴を対象とした異常恐怖症の1つです。この症状は場合によって、命に関わることもあるため注意が必要です。
では、犬の雷恐怖症とは一体どのような症状なのでしょうか。以下にあたる行動をした場合は、もしかしたらあなたの愛犬も雷恐怖症かもしれません。
- うろうろし、落ち着きがなくなる
- 吠える
- 小刻みに震える
- 食欲がなくなり、水も飲まない
- 下痢、血便
- 嘔吐
- 引きこもったり、隠れたりする
- 逃避、破壊行動
- 抱っこしようとすると噛みつく
- トイレ以外の場所で粗相する
- けいれんや失神
雷を怖がる犬を落ち着かせるには?
雷の音を聞いて怯えたり、パニックになったりしている愛犬をどうにか落ち着かせる方法はないのでしょうか。
また、飼い主はどのように対処すればよいのでしょうか。
1.飼い主さんが冷静になって落ち着くこと
犬はとても敏感な動物です。飼い主さん自身が雷を怖がることで「やっぱり雷って怖いものなんだ」と余計に恐怖心をあおってしまいます。
犬が怯えないためにも飼い主さん自身が冷静になり、優しく愛犬に声を掛けてあげるようにしましょう。
ただしここで注意することが2点あります。
1つ目
犬を安心させようと必死に抱っこしたり、かまったりしないようにしましょう。いつもと違うと犬は感じ、余計動揺してしまいます。
2つ目
雷が怖くて吠え続けたり、走り回っても決して叱らないようにしましょう。叱ることで余計恐怖心を抱くようになってしまいます。
これらを守り、なるべく平然といつも通りに接してあげてくださいね。
2.室内に犬にとって安全な場所を用意する
日頃からケージやクレートなどを用意し、犬にとって安心できる場所を確保してあげましょう。安心できる場所があることで、お留守番中に雷が鳴っても負担なく過ごすことができますよ。
また、犬が雷や花火などの音にビックリしそうな時は事前に「ハウス!」と、安心できる場所に誘導してあげてください。そうすれば犬も落ち着くことでしょう。
3.サンダーシャツを着せてみる
恐怖心の強い犬や、不安症の犬などに効果が期待できる「サンダーシャツ」という洋服があります。
これは、犬の体にフィットした作りになっていて、まるで犬が抱きしめられているようなしめつけ感を得られます。そのため、犬が感じる不安や恐怖といったものを緩和させる効果があるそうです。
すぐに効果がある犬の場合は、たとえ雷が鳴っていても気にせず寝てしまうんだとか。
ただし劇的に効く子と効かない子に分かれるようなので、一度試してみるとよいでしょう。
4.子犬であれば、音や刺激に慣れさせる
犬はパニックに陥ると、不安行動から逃避行動に出る場合が多く、雷雨の日は普段よりも迷子の数が増加するといわれています。
家のドアや窓から飛び出して、交通事故を引き起こす可能性も否定できません。そのため、子犬の頃から音に慣れさせる訓練を行っていきましょう。
例えば怖がる音を録音したり、YouTubeなどで探したりして聞かせ、段階的に慣らしていきます。大人しく聞くことができれば、その都度褒めてご褒美のおやつをあげましょう。
そしてこれを毎日続けながら、だんだん実際の音量と同じ程度まで上げていきます。リラックスしながら少しずつ慣らしていくことで、恐怖心や不安な想いを解消させることができますよ。
ただし、無理に慣れさそうようとすると返って逆効果になる恐れもあります。犬の様子をよく観察しながら行うようにしましょう。
5.「リラックス」をする訓練を行う
犬に「リラックス」「休め」などの指示をゆっくりと優しい声で掛けていき、犬を静かに落ち着かせる「リラックス訓練」を行ってみるとよいでしょう。
飼い主さんの落ち着いた声に反応し、犬が落ち着き始めたらゆっくりと体を撫で「いい子だね」と声をかけてあげてください。
これを日頃から少しずつ訓練することで、犬が雷などでパニックを引き起こした場合でも「リラックス」「休め」というコマンドを聞くことで、落ち着きを取り戻すことができます。
根気と時間がかかる場合もありますが、覚えさせておくとよいですよ。
6.天候や周囲の変化を随時チェックする
「今日は午後から天気が崩れる」「明日、近所で花火大会がある」などという時は、あらかじめカーテンや雨戸を閉め、TVや音楽などをかけて過ごしましょう。
犬に周囲の変化をあまり感じさせないことで、突然鳴り響く音や光に対して犬が驚かなくて済むようになります。
日頃から飼い主さんが自宅周辺の変化をチェックし、事前に対策を立ててあげるようにしましょう。
それでもダメな時は、かかりつけ医や行動治療に詳しい専門医に相談を
下痢や血便、嘔吐などの症状を引き起こしたり、飼い主を噛んだり攻撃してきたりする場合は、速やかにかかりつけの動物病院に相談してください。その際、可能であれば獣医行動診療科(動物行動診療科)認定医がいる動物病院を紹介してもらうとよいでしょう。
ペットである動物の問題行動を診療する専門医が、愛犬の行動に対して詳しくカウンセリングを行い、診断・治療プランを立ててくれます。
その際、普段の様子や雷の音を聞いた時の行動などをメモをしたり、動画で録画しておくと説明がしやすいですよ。
おわりに
大切な愛犬が雷の音を聞くたびに恐怖で震えているのは、飼い主にとっても心苦しいことですよね。
少しでも愛犬の心に落ち着きを取り戻せるように、飼い主さん自身が飼育環境を整えてあげましょう。もし愛犬がまだ子犬の時期であれば、社会化期のうちに色々な経験をさせ、音に慣れさせてあげるとよいですよ。
ただし雷などの音による恐怖から愛犬が飼い主さんに対して攻撃的になった場合は、速やかにかかりつけの動物病院に相談してくださいね。
著者/ブリーダーナビ編集部