「犬が欲しい!」そう思ったとき、実際にお迎えする上でどんなことを考えるべきなのでしょうか。
ここでは、犬を飼いたいけど迷っている人に向けて、犬を飼う上でのメリット・デメリットを始め、どんな人が犬を飼うのに向いているのかについてご紹介したいと思います。
お金がないのに犬を飼うのはOK?
インターネットサイトやペットショップにいる子犬を眺めていると「いつか飼ってみたいな」と思ったことのある人は多いのではないでしょうか。
しかし犬を飼う上で必須ともいえるのが『金銭面の問題をクリアしているかどうか』です。
犬を飼う場合、犬そのものの購入費用だけではなく、毎日食べるフードを始め、生活に必要なアイテム、万が一の時の医療費などの出費を考えなくてはいけません。
初期費用と維持費を簡単にまとめると、以下のようになります。
小型犬 | 中型犬 | 大型犬 | |
---|---|---|---|
登録料 | 3,000円(+注射済票交付に550円) | ||
ワクチン、予防接種代 | ワクチン代:1回3,000円~、狂犬病予防注射:約3,550円 | ||
グッズ代 | 約3万円~ | ||
ごはん、おやつ代 | 約48,000円 | 約72,000円 | 約96,000円 |
トリミング、お手入れ代 | 3,000~4,000円 | 約1万円 | |
年間光熱費 | (月平均+約5,000円)×12 |
費用についての詳細は、こちらの記事をご覧ください。
【初めての方向け】犬の費用ってどのくらい?初期費用、維持費など
初期費用や毎月かかる維持費用などについて、詳しく見ていきましょう。
犬を飼うときにかかる初期費用について
ワンちゃんを飼うとき、犬自体の生体価格以外にもいろんな初期費用が掛かってきます。
日本では狂犬病の予防接種が義務付けられており、また新しく飼い主になる人は、犬を飼い始めてから30日以内(生後90日以内の子犬の場合は、生後90日を経過してから30日以内)に各自治体に登録を行うことが法律で定められています。
また任意ではありますが危険な感染症を予防するための混合ワクチンの予防接種や、望まれない繁殖を防ぐために必要な避妊去勢の手術代、さらには犬を迎え入れるために最低限必要なグッズ(サークル、食器、トイレ、フード、おもちゃ、ペットシーツなどの日用品)などの購入が必要となってきます。
以上を合わせると、犬との生活を始めるために必要な初期費用は、犬の価格を除いても最低でも4万円以上はかかってくることになります。
なお生体価格は犬種によって差があります。代表的な犬種の平均価格を以下の記事に掲載しているので、こちらもあわせて参考になさってください。
年間の維持費用について
犬の購入代金と初期費用だけで終わりではありません。
愛犬が健康で快適に過ごすためにも、食事・お手入れ・住環境を維持していかなくてはなりません。
小型犬 | 中型犬 | 大型犬 | |
---|---|---|---|
ごはん、おやつ代 | 約48,000円 | 約72,000円 | 約96,000円 |
トリミング、お手入れ代 | 1回:約3,500~7,000円 | 1回:約10,000円 | 年間光熱費 | (月平均+約5,000円)×12 | 医療費※ | 約90,000円 | 約98,000円 | 約111,000円 |
※参考:日本獣医師会「家庭飼育動物(犬・猫)の飼育者意識調査(平成27年度)」
犬との暮らしはどうしても、楽しさやかわいさに意識が向きがちですが、かかる費用はかなり大きいことがわかります。
これら突然のケガや病気などに備えて、ペット保険には加入しておきたいところです。ペット保険にかかる保険料は各保険会社によって異なりますが、最低でも月2,000円から発生してくるでしょう。
犬を飼うということは、これら全てを受け入れる覚悟が必要といえますね。
犬を飼う上で見落としがちな費用も
犬を飼う上で、うっかり見落としてしまうと、家計に大きく負担となる費用があります。
例えば、戸建て住まいの方であれば関係ない話しではありますが、ペット可の賃貸物件に済む際、一般的な賃貸と比べて敷金が1~2ヶ月分高い場合があります。
またペット保証金として賃料の1~2ヶ月分預ける必要がある場合もあります。さらに退去時には部屋の修繕費が多くかかれば追加で請求されることもあるでしょう。
それだけではありません。
ご家庭でのしつけが難しい場合は、しつけ教室やドッグトレーナーの訓練代(5,000~10,000万円)がかかってきますし、旅行や仕事の都合で家を空ける場合、ペットホテルを利用するかと思います。その際発生してくる1泊の宿泊料金は小型犬であれば3000円~、大型犬の場合は1万円以上が掛かってくることも。
犬を飼うということは、さまざまな面でお金がかかってくることがわかります。そのため安易に「犬を飼いたい」だけで飼うのは、お互いにとって幸せにはなりません。
ご自身の経済状況を考えた上で、犬をお迎えするようにしましょう。
あなたが犬を飼うのに向いているかチェック!
自分が犬を飼うことに対し、果たして向いているかどうか気になっている方も多いかと思います。
また飼ってからも「本当にお迎えしてよかったのか…」と不安に思うこともあるかもしれません。
そんな不安を少しでも払拭するためにも、あなたが犬を飼うことに向いているのかチェックしてみましょう。
- 終生飼育の責任が負えるか
- 家族の同意と協力が得られているか
- 犬の習性などを正しく理解しているか
- 時間と手間を割くことはできるか
- ペットを飼える家に住んでいるか
- お金がかかることをきちんと理解しているか
当てはまらないものはありませんでしたか?
ここからはそれぞれを詳しく解説していきます。具体的にどういう点を考えれば良いのかの参考にしてください。
終生飼育の責任が負えるか
犬と暮らすということは、命を持った家族が増えるということ。犬の一生に対して責任と覚悟を持つことが大切です。
ただ「癒されるから」「かわいいから」といった安易な考えで犬を飼ってしまったら、きっと後悔することになり、犬もあなたも不幸になってしまいます。
犬はあなたの都合のよいおもちゃではありません。
毎日のお散歩にお世話、健康管理にも気を付けなければいけませんし、老後は介護をする必要があるかもしれません。また生活環境の変化や仕事の都合などで、引っ越しを余儀なくされる場合があるかもしれません。
犬を家族の一員として迎え入れたのであれば、転居先でもペットが飼える住居を探すなど、ペットの終生飼養を心がける必要があります。
犬の寿命は大体10年から15年程度で、長いと20年ほど生きる子もいます。飼い始めてから20年後の将来のことまでを見据えた上で、犬を飼っても問題がないか改めて確認することが必要といえるでしょう。
家族の同意と協力が得られているか
犬を家族として迎えるにあたって、家族全員が犬を飼うことに同意していることが大切です。
例え家族の中に大の犬好きが1人いたとしても、両親のどちらかが反対したら飼うことはできません。なぜならば、犬を飼うにはどんなときも同居者全員の理解と協力が必要になるからです。
どうしても犬を飼いたいという気持ちがあるのであれば、犬を飼う前に今一度考えを精査し、家族を説得してみてください。
また人によっては動物の毛やフケ、排泄物などでアレルギー反応を引き起こす体質の人もいます。飼う前に必ず、専門の病院でアレルギー検査をするようにしてください。
もしも動物アレルギー発症の可能性があると判断された場合、どのような対策を立てるのか、飼う・飼わないを含め家族内できちんと話し合ってくださいね。
犬の習性などを正しく理解しているか
犬の習性や行動を知ることは、その後の問題行動の予防や近隣住民とのトラブル抑止にも繋がります。
犬種によっても特性があり、性格の傾向やかかりやすい病気などが違います。そのため、これらをきちんと学んでおくことで、犬にとって快適な生活環境を整えることができますし、もしものときに備えることができるのです。
犬について何も学ぼうとせず、ただ「かわいい」といった理由だけで迎えてしまうと、不幸な結果を生み出してしまうかもしれません。
犬を飼うのであれば、飼いたい犬の特性や習性などを正しく理解しておくことが大切です。
時間と手間を割くことはできるか
「犬をお迎えする」ということは、その動物のために時間と手間を割くということです。
毎日新鮮な水とごはんを与え、トイレのお世話、散歩、過ごしやすい生活空間の維持、ブラッシングなどのお手入れ…これらを全てこなせる時間と体力がなければいけません。
子どもの希望で犬をお迎えすることもあるかと思いますが、これだけ大変なことを考えると数ヶ月後には犬の世話が全て親の担当になってしまうというのも容易に想像ができますね。
これらのことを踏まえた上で、犬種の特性や成長したときの大きさなども含め、時間と手間を割き続けていくことができるのかを改めて検討するようにしましょう。
ペットを飼える家に住んでいるか
ペットを飼いたいと思っている人が賃貸物件に住むのであれば、ペット可物件を選ぶ必要があります。
また例えペット飼育可の集合住宅に住んでいたとしても、ペットの問題で住民同士が揉めてしまうといったケースは少なくありません。
例えば「ペットの臭い」「鳴き声などによる騒音」「共用部などでのルール違反」など、ちょっとしたことが大きなトラブルを引き起こすこともあるのです。
他の入居者とのトラブルを防ぐためにも、飼い主自身が責任を持ってペットを管理をすることができるかどうかも重要となってくるでしょう。
お金がかかることをきちんと理解しているか
犬を飼うには購入代金だけではなく、その後のお金もかかってきます。
具体的には毎日のごはん代を始め、ケージや首輪、ペットシーツといったペット用品、ワクチン代やフィラリア予防薬、定期的な健康診断に、避妊去勢費用、病気やケガをした時の医療費などです。
また犬種によっては定期的なトリミング代などの費用もかかってきます。これらの金額が生涯に渡ってどのくらいかかるのか計算し、必要な費用を継続して出していけるのか考える必要があります。
犬を飼うメリットって?
よく「犬を飼うと人生が豊かになる」といいますが、具体的にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
ここでは、犬を飼うことによって生まれる4つのメリットについてご紹介します。
メリット①毎日が楽しく癒される
犬との暮らしはただ楽しいだけではなく、大変なことももちろんあります。だからこそ1日1日が充実したものとなり、犬との心の絆も強くなっていくのです。
また犬と触れ合うことで幸せホルモンである「オキシトシン」の分泌量が3倍以上に増加するといわれています。
オキシトシンとは、別名「癒しホルモン」「愛情ホルモン」などとも呼ばれ、ストレス軽減の効果も期待できます。
犬は心身ともに癒してくれる「心のビタミン」となるのです。
メリット②規則正しい生活によって健康になる
よくペットを飼うと、生活が規則正しくなるといわれています。その理由は、ごはんや散歩の時間など、生活の中にルーティンが生まれるからです。
今まで不規則な生活を送っていた人が犬を飼い始めたことで、早寝早起きができるようになったり、食事を日に3度欠かさず取るようになったりと、毎日が規則正しい生活へと変わったというのはよくある話しです。
生活リズムの乱れが気になっている方や運動不足の方は、犬を飼うことで健康的になれるかもしれませんよ。
メリット③交友範囲が広がる
犬は最も古くから家畜化されてきた動物であり、人と人とのコミュニケーションを円滑にする効果があるといわれています。
確かに犬を飼い始めると散歩やドッグラン、動物病院やドッグカフェなどさまざまな場所でほかの犬の飼い主さんと交流があります。
そのため自然と犬友だちができたり、他人と話す機会が多くなったりするので、顔見知りの人が増えていき交友関係も広がっていきます。
友だち関係になるのはもちろん、何か困ったときに助けてもらえる心強い味方になってくれることでしょう。
メリット④子どもに良い影響を与える
犬はただかわいいだけではありません。
毎日一緒に遊んだり、お世話をしたりすることで、子どもにとってより豊かな感情や思いやりの心、そしてコミュニケーション能力などを養うことができます。
また犬を飼うことで命の尊さを学ぶことができますし、辛いときや悲しいときには、そばでなぐさめてくれる大切な存在にもなることでしょう。
犬を飼うとできなくなること、デメリットは?
犬との暮らしは決して良いことばかりではありません。そのため「こんなはずじゃなかった」と手放してしまう人がいるのも事実です。
そうならないためにも、デメリットの部分もきちんと知っておくべきといえるでしょう。ここでは、犬を飼う上でのデメリットについてご紹介します。
デメリット①毎日のお世話が大変
犬は犬種を問わず散歩が必要ですので、1日に朝晩2回外に連れて行くことが推奨されています。特に運動量の多い犬種に関しては、1日最低1時間の散歩が必要ともいわれています。
そのため「明日出張だから」「夜、友だちと会うから」などの理由で散歩を休むことはできません。もしも犬の散歩を怠ると、運動不足になることはもちろんのこと、肥満の原因や筋力の低下に繋がる恐れもあります。
犬にとってお散歩は楽しみの1つですから、毎日時間を割いてあげる必要があるのです。
またお散歩以外にも、犬の健康を守るためにシャンプーやブラッシング、爪切りといったボディケアも欠かせません。
犬を飼うということは、それだけ手間ひまをかけなくてはいけないのです。
デメリット②時間や行動に制限がかかる
ペットを飼っていなければ、好きな時間に好きなことができますが、犬を飼うと犬中心の生活になるので、時間や行動に制限がかかってきます。
また旅行にも気軽に行くことができなくなります。最近では犬と一緒に泊まれるホテルや旅館が増えていますが、行きたい場所に犬と泊まれるかは定かではありませんし、もしかしたら諦める必要があるかもしれません。
なんとかペットホテルに預けて旅行に出かけたとしても、愛犬が心配で旅行気分にはなれないなんてことも。
ペットがいなければ気軽に行けた場所でも、犬がいることで色々なことを気にする必要があり、簡単なことではなくなってしまうのです。
デメリット③近隣トラブルを引き起こすことも
自分は犬が大好きであっても、周りに住んでいる人が犬好きだとは限りません。
「犬の鳴き声がうるさい」「排泄物の臭いが気になる」など、ちょっとしたことが大きなトラブルを引き起こす可能性があります。
特に犬の鳴き声は外に響きますので、近隣トラブルを防ぐためにもしっかりしつけをして、飼い主としてのマナーやモラルを大切にしなくてはいけません。
デメリット④シニア犬になると介護が必要な場合も
昭和50年代では犬全体の平均寿命は7〜8歳といわれていましたが、令和2年の犬全体の平均寿命は14.48歳※1と、平均寿命が30年で約2倍に変わっています。
獣医療の発達や身体によいフードが増えたことが1つの理由といえます。しかしその一方で、犬の介護が必要になってくるケースも増えてきました。
自分でごはんを食べるのがままならなかったり、排泄ができなくなったりと、飼い主に大きな負担が強いられています。
そのため、犬を飼う前から最期のときまで添い遂げる覚悟が必要です。
※1.一般社団法人ペットフード協会「令和2年 全国犬猫飼育実態調査」より
まとめ
犬を飼い始めたその日から、小さな命の全てはあなたに委ねられます。
そのため毎日のお世話をはじめ、住環境、経済的状況などで少しでも不安に思うことがあれば、今は飼うべきではないかもしれません。
「こんなに大変だと思わなかった」「仕事の都合で飼えなくなった」そういった飼い主の都合で振り回される犬の気持ちを考えてみてください。
犬が大好きだからこそ、飼えるようになるまで我慢するというのも、ペットに対する愛情の1つでもあります。
犬は物ではなく1つの大切な命であり、私たち人間と同じように感情を持っています。もしも犬を飼うと決めたなら、責任を持って天寿を全うするそのときまで、愛情を持って大切にお世話をしてあげてくださいね。
著者/ブリーダーナビ編集部