飼い主である自分だけに懐いてくれて、常に甘えてくれる愛犬はこの上なくかわいい存在です。そのため、つい甘やかしてしまいがちですが、度が過ぎると『分離不安症』になってしまうかもしれません。
そもそも『分離不安』ってなに?
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『分離不安障害』とは、愛着のある人や場所から離れることに不安を感じることを意味する心理学用語です。
ワンちゃんだけでなく人間もなることがあります。
飼い主と離れる不安から問題行動を起こしてしまう
ワンちゃんの分離不安症は、留守番などひとりで生活することを余儀なくされることで不安を感じ、さまざまな問題行動を起こすようになる状態です。
これは、本来群れで行動するワンちゃんの習性とは異なる生活スタイルを送ることで生じると言われています。
分離不安症を発症すると、「無駄吠え」「食糞」「自傷」などの問題行動を取るようになり、留守番などひとりで過ごす時間だけでなく、日常生活にも不都合が生じることがあります。
アメリカでは、ワンちゃんの問題の行動のうち、実に20~40%の割合で分離不安症が原因であるという研究結果も発表されているようです。
吠える・噛むのは分離不安症?チェックするポイントは?
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分離不安症は身体的な病気ではないので、症状で判断することが難しいかもしれません。そのため、シチュエーションとそれに伴う行動を確認したうえで、専門家に診てもらうようにしましょう。
その問題行動、分離不安症の症状かも
分離不安の症状は、飼い主と離れることへの不安から起こります。
以下のような行動が代表的な症状ですが、こうした行動が見られたとしても、必ずしも分離不安と断定できるわけではありません。分離不安症は、ワンちゃんの精神疾患の一種なので、一度動物病院に相談することをおすすめします。
<分離不安症の症状>
・無駄吠え
・落ち着きがない
・食糞
・出かけようとすると、隠れたり鳴いたりする
・尿失禁、便失禁
・嘔吐
・自傷
・飼い主が帰宅したら、過度に興奮する
・留守中に物を壊す、ドアを引っかく
・食事をとらない
・震える
生活環境の変化、老犬になってから症状が出ることも
愛犬の心を安定させるには、生活環境を安定させることが重要です。
問題なく留守番できていたワンちゃんが、生活環境が変化したことで分離不安症になってしまったという実例もあります。
また、分離不安症は加齢にも少なからず関係しています。
視力や聴力の衰えから不安を感じてしまい、そこに飼い主の不在が加わると分離不安症につながることも。さらに、認知症になることで感情のコントロールができなくなり、問題行動を起こしやすくなります。
<分離不安症につながる問題>
・引っ越し
・家族が増える
・家族の死、病気、離別
・社会化不足
・先天的な問題
・極端な退屈
・飼い主とのコミュニケーション不足
分離不安症と誤解しやすい病気も
良く似た症状が現れたとしても、それだけで分離不安障害とは断定するのは危険かもしれません。なぜなら、同じ症状であっても、他の病気を患っている可能性もあるからです。
例えば、尿失禁は分離不安症の症状の1つですが、これは単純にしつけ不足が原因の場合もあります。また、加齢やホルモンの問題であったり、膀胱結石、糖尿病の可能性も否定できません。
こうした可能性が他の症状にも当てはまるため、早計な素人判断は危険です。
分離不安症の疑いがあるようなら、まずは獣医さんに相談することをおすすめします。
分離不安症は治せる?対策と注意点
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ワンちゃんの分離不安症は、飼い主と離れる事で問題行動を起こす精神疾患です。
つい甘やかしてしまいがちな飼い主さんも多いので、潜在的なリスクはとても大きいと言えるでしょう。
では、一度分離不安症になったワンちゃんは、症状を克服することができるのでしょうか?
なるべく早くからしつけを始める
分離不安障害は、克服が見込める精神疾患ですが、一朝一夕でどうにかできるものではありません。分離不安になってから対応するのではなく、問題が起きないように予防することが大切です。
分離不安症対策は、早期予防が肝心です。
早い段階からしつけを始め、ひとりでいることに不安を感じないようにするといいでしょう。
<しつけのポイント>
・ひとりに慣れさせる
・ケージでの生活に慣れさせる
・外出や帰宅時の触れ合いは控えめに
・十分な運動をさせる
過度な甘やかしは厳禁!
分離不安症の原因の多くは、過度な甘やかしや過保護です。
迎えた子犬を甘やかしたくなるのは飼い主の常ですが、それと同等のしつけもする必要があります。
例えば、要求に全て応えていたり求めるままに甘やかしていたりすると、ワンちゃんは家族の中で自分が一番偉いと勘違いしてしまいます。
そうなると、分離不安を抱えることになり、少しでも自分の意に沿わないと問題行動を起こすようになってしまう可能性があります。
ワンちゃんは、本来リーダーに服従して誉めてもらうことに喜びを感じる動物です。愛犬にリーダーと認めてもらい、飼い主が主導権を握ることで分離不安症や問題行動を起こすようなことはなくなるでしょう。
留守番に慣れてもらう
愛犬をひとりにする時間といえば、お留守番です。
分離不安症のワンちゃんが問題行動を起こすのは、多くが飼い主不在の時間。そのため、お留守番に慣れさせることも、分離不安症の予防につながります。
では、具体的にお留守番に慣れてもらうためにはどうすればいいでしょうか?
ひとりでいることに不慣れなワンちゃんは、飼い主が視界から消えることに不安を感じます。そのため、まずは極短い時間愛犬の前からいなくなり、すぐ戻ってください。
何度か繰り返すうちに、「いなくなっても帰ってくる」ことを覚えてくれるようになるので、戻ってくるまでの時間を少しずつ伸ばしていくといいでしょう。
また、外出前の接し方も大事です。
敏感な子は外出前の準備をしているだけで「飼い主がいなくなる」と察してしまうので、愛犬の前ではできるだけさり気なく普段通りの態度を心がけてください。
このほか、一緒に寝るなどベッタリとした関係性を築くと、それが当たり前になってしまい少し離れるだけで不安を感じてしまうようになります。
愛犬が問題行動を起こすような子に育たないようにするためにも、ひとりでいることに慣らすようにしてください。
分離不安症のワンちゃんにやってはいけないこと
分離不安症に対する有効な対策を紹介しましたが、逆にやってはいけないNG行動も存在します。
代表的なものとして、以下に5つの例を紹介します。
基本的に素人判断で実行するのは避け、事前に獣医さんに確認しておくといいでしょう。
・罰を与える
これは一般的なしつけの観点からも、避けた方がいい行為です。多くのドッグトレーナーが、罰を与えることは逆効果であると同意してくれるでしょう。
・多頭飼い
留守番が寂しくないように、新たにもう一頭迎えたとしても、分離不安症を抱えたワンちゃんが増えるだけかもしれません。しかし、多頭飼いにより症状が和らぐ可能性も否定できないので、まず獣医さんやドッグトレーナーと相談してることをおすすめします。
・ケージに閉じ込める
狭いところに閉じ込めれば、行動は制限されるのでその場しのぎにはなりますが、それが原因でストレスや問題行動が悪化する恐れもあります。ただ、愛犬の専用スペースとしてケージを利用するのは有効なので、使い方次第ともいえます。
・留守中静かにしない
外出中もラジオやテレビを点けっ放しにすることで、ある程度騒々しい環境を作るのは、場合によっては有効です。しかし、興味がなければ効果は期待できないどころか、ワンちゃんによってはストレスをぶつける対象になりかねないので、リスクもあります。
・服従訓練
分離不安症とは関係なく、服従訓訓練は必要なしつけの1つです。しかし、それが分離不安症のワンちゃんに有効かというとまた別の話。
愛犬の分離不安症は、しつけ不足が原因ではないかもしれません。
飼い主が一人で抱え込まないことも大切
分離不安症は、ワンちゃんの行動に症状が現れるものですが、家族の問題である以上、飼い主も自分のこととして意識する必要があります。
しかし、一人で抱え込んでしまうのは、飼い主さんも大きなストレスを抱えることになるので、場合によっては専門家に相談することも視野に入れておきましょう。
獣医師やドッグトレーナーに相談することも考えて
愛犬の分離不安症は、家族の問題です。
家族の問題は日常生活の一部なので、気が休まることがなく常に悩んでいる状態になってしまいかねません。これでは、いずれ飼い主さん自身もまいってしまいます。
愛犬に分離不安症の疑いがある場合は一人で抱え込まず、状況に応じて一度かかりつけの動物病院で診てもらうなど、専門家に相談してみると良いでしょう。
例えば、ペットホテルやドッグトレーナーを利用したり、家族、知人に預けるのもおすすめです。分離不安症はひとりになることで問題行動を起こすので、誰か一緒にいてくれる環境を作ってあげれば、少なくともその間は安心して過ごしてくれるでしょう。
まとめ
ワンちゃんの分離不安は、犬種問わずなる可能性がある精神疾患です。
個々の性格にもよりますが、どのワンちゃんでも患う可能性があるので、今回の記事を参考に予防に努めてくださいね。
分離不安症になるかどうかは、飼い主と愛犬との関係性が大きなポイントです。
これからワンちゃんを迎えようという人は、世代を越えてワンちゃんを飼育しているブリーダーから一度お話を聞いてみるといいでしょう。
何が良くて何が悪いのか、事前に知っておくことで適切な関係性を築くことができると思います。
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著者/ブリーダーナビ編集部