生後4週~13週の『社会化期』は、最も学習に適した期間といわれています。将来のことを考えれば、この時期のしつけはとても重要です。
きちんとルールを守る、賢いワンちゃんに育てる為にも、しつけの方法を確認していきましょう。
目次
子犬のしつけの順番
- 名前を覚えさせる
- アイコンタクトを教える
- トイレトレーニング
- 体を触られることに慣れさせる
- ハウストレーニング
- 社会性を身につける
- 「お座り」「待て」「伏せ」の練習
- お留守番の練習
しつけを始める前に信頼関係を築くことが大切
しつけをスムーズに行うためには、前提として飼い主と愛犬が信頼関係を築けている必要があります。しっかりとした信頼関係が築けていないと、どれだけ丁寧に時間をかけても、なかなか聞き入れてくれません。愛犬に信頼されることで、しつけをはじめとした指示に素直に従ってくれるようになるのです。
順番にはこだわりすぎなくても大丈夫
多くの飼い主さんは、愛犬に「しつけを早く覚えてほしい」と思うでしょう。しかし、あれもこれもと一度に多くのことを覚えさせようとしても無理があるので、順を追って教えていくようにしてください。
トイレトレーニングなど、しつけの中には優先的に覚えさせたいものもありますが、明確な順番はないので、愛犬の成長に合わせて無理なくしつけることも大切です。
①名前を覚えてもらう
愛犬に自分の名前を覚えてもらうと、さまざまな点で役立ちます。名前を呼べば目を合わせてくれるようになったり、咄嗟に呼び止めることができるようになったり、意志の疎通ができるようになるので、信頼関係の構築にもつながるでしょう。
◎名前を覚えさせる方法
愛犬に自分の名前を覚えてもらうには、ほかのしつけ同様に条件付けをすると良いでしょう。おやつなどのご褒美を利用して、「名前を呼ぶと良い事が起きる」と認識させることで、名前を呼ぶと反応してくれるようになります。
具体的には、名前を呼んで反応したり、そばに来てくれたりしたら、おやつをあげて褒めてあげましょう。たったこれだけですが、繰り返すことで名前を覚えてくれます。
ただし、反応がなくても怒ったりしてはいけません。一度でも怒ってしまうと、「名前を呼ばれる=悪いことが起きる」と学習してしまいます。また、名前を統一することも大切です。ワンちゃんは人間の言葉を意味ではなく音で認識するので、ご家庭内で呼び名がバラバラだと、名前を呼ばれていると理解してくれません。
◎名前を覚えてくれないときの対処法
また、名前を呼ぶ際は、「高い声を出す」「抑揚をつける」などを意識すると、聞き取りやすく認識されやすくなります。
②アイコンタクト
しつけ・コミュニケーションの基本となるのが”アイコンタクト”です。しつけを行う際には、愛犬が自分の名前を覚えている必要があります。また、名前を呼んで目と目が合うことによって、犬は飼い主の指示を聞き取ろうとし、徐々に信頼関係を築いていくことができます。さらに、アイコンタクトで注意を引くことでアクシデントや事故の危険から守ることができます。
1.おもちゃを使って誘導しつつ愛犬の名前を呼ぶ
2.自分の手を愛犬の顔へもっていき、興味を引く
3.自分の手を愛犬の顔から自分の顔へ移動させて、目がきちんと合ったら高い声で名前を呼んで褒める
これらを繰り返すことによって、自分の名前を呼ばれる→アイコンタクトを取る→楽しいことが起こる、と覚えさせていきます。
③トイレトレーニング
トイレの場所を覚えさせるのも大切なしつけの一つです。一度、間違った場所でおしっこをしてしまうと、おしっこの臭いが染みついてしまい、次も間違った場所でおしっこをしてしまいやすくなります。ソファやカーペット、布団などは洗濯してもおしっこの臭いが取れにくく特に注意が必要です。犬は本来”きれい好きな動物”ですので、ご飯、寝床、遊ぶ場所とトイレの場所をしっかり分けようとします。その習性を利用したトイレの覚え方をご紹介します。
◎トイレの覚えさせ方
1.ケージの中に寝床とトイレを分けて準備する
2.トイレのタイミングを知る
- 寝起き
- 遊びや運動をした後
- ご飯後
3.トイレのサインを知る
- 床の臭いを嗅ぐ
- ソワソワし始める
- クルクル回る
- しゃがむ動作をする
4.サインが出たらトイレの場所へ連れていく
5.上手にトイレができたら、トイレを終えてすぐによく褒める
◎トイレを失敗したら?
トイレに連れて行く前に違うところでトイレをしてしまいそうになった場合は、ワンちゃんの”反射”を利用して音を立てて気をそらせましょう。
※音に敏感、臆病な子は怖がってしまうので気を付けてください。
万が一、違う場所でトイレをしてしまったときは、絶対に叱らないでください。もちろん手を挙げる、粗相をした場所に鼻を押し付ける、といった行為はしてはいけません。トイレそのものが悪い行動だと思い、我慢をしたり、隠れてするようになってしまいます。
しつけの覚えやすさには個体差があります。なかなか覚えなくても、トイレトレーニングは根気強く何度も繰り返し行いましょう。トイレシートを敷きつめてトレーニングする場合は、少しずつトイレに慣れてきたらシートの範囲を縮めていき、最終的にはシート一枚になるまで減らして覚えさせましょう。
下記ページでは「トイレのしつけ」について、より詳しく解説しています!こちらも参考にしてみてくださいね。
【子犬のトイレトレーニング】しつけ方法・うまくいかない時の対処法
④体を触られることに慣れてもらう(ボディーコントロール)
愛犬のお手入れは、病院やサロンでお願いしている人は多いですが、子犬の頃から慣れさせることで、自宅でも簡単なお手入れができるようになります。もちろん成犬になってからでも始められますが、今まで触られたことがないところを、急に触られてビックリして噛んでしまう子もいるため、子犬の頃に慣れさせておけるとベストです。普段から慣れている子は病院やサロンで触られてもビックリしないので、お預け先でもお利口さんでいられますよ。
- 目ヤニ取り
- 涙焼けのケア
- 耳そうじ
- 歯みがき
- 爪切り
- ブラッシング
⑤ハウストレーニング
「ハウス(クレート)トレーニング」とは、室内に用意したクレートを愛犬専用の部屋とみなして、寝床として教えるしつけです。ただ寝る場所を用意するのではなく、愛犬が安心して落ち着ける場所を提供することにもなるので、留守番などひとりにする際にも大切なしつけといえるでしょう。
また、動物病院に連れていくときや災害時の避難にも必須なので、安心だけでなく健康や安全のためにも欠かせないしつけといえます。
◎ハウストレーニングの手順
1.クレートにおやつを置く
おやつをクレート内に置くことで、まずはそこを「おやつが食べられる場所」と認識させましょう。ポイントは、愛犬が見ていない間に、匂いが強いものの方が成功しやすいです。
2.おやつを食べるまで待つ
基本的には何もせずに放置でOKです。声がけもせず、ただ愛犬が自発的におやつを口にするのを待ちましょう。どうしてもクレートに入ってくれないようなら、最初は中ではなく入り口付近にオヤツを置き、少しずつ奥に持っていき、中に誘導するようにしてください。
焦らず、数日かけるつもりで気長に待ちましょう。
3.食べ終えたらまたおやつを置く
クレートに置いたおやつを食べ終えたら、またおやつを置いて1と2の繰り返します。これで少しずつ「ハウス=オヤツが食べられる場所」と覚えてくれます。
⑥社会性を育む
“社会性”を身につけさせることも、しつけの一つです。社会性を身につけることで、他の犬や人とのコミュニケーションを図り、一緒に遊べるようになります。また、攻撃的になって吠えたり噛んだりすることを防ぐことができ、遊びの中で力加減を学べるので、より賢く、より優しいワンちゃんに育つことができます。成犬になると、噛む力も強くなり、性格もしっかり形成されてしまっているので、社会性を身に付けるのはなかなか大変になります。そうならないためにも、子犬の時期からしっかりと社会性を身につけておきましょう。
◎どうやって社会性を身につけるの?
具体的には、お散歩やドッグラン、ドッグカフェに出かけて、他の犬や人とふれあうことで徐々に社会性が身についていきます。また様々な音がする場所で慣れさせることも効果的です。
- 生活音や雷など音、物に慣れるトレーニング
- 飼い主さん以外の人とのふれあい
- 犬同士のふれあい
パピーパーティーへの参加もオススメです。パピーパーティーとは、同じ月齢(生後5ヶ月まで)ぐらいの子犬を集め、1頭だけではできないことをみんなで遊びながら社会性を学ぶ集まりの場です。具体的には、以下の様なことを行います。
同じ悩みを持った飼い主同士での意見交換をしたり、トレーナーさんに相談して、しつけのアドバイスをもらったりと、飼い主さんにとっても有意義な場となります。“パピーパーティー”に参加するには、条件・資格がある場合や、費用がかかることもあるので事前に確認をしておきましょう。
⑦「お座り」「待て」「伏せ」
”「お座り」「待て」「伏せ」”ってなんで覚えさせる必要があるか知っていますか?人間と一緒に生活する上でワンちゃんが好き勝手な行動をしないよう、動きを制御したり、落ち着かせるためのものであり、これらの命令によって愛犬と飼い主の主従関係を明確に築いていくためのものともされています。特にお散歩の時に、他のワンちゃんや人に対して攻撃的な行動を取らないよう、あらかじめしつけておくと役に立ちます。
◎お座りの仕方
1.愛犬の正面に座る
2.フードを愛犬の鼻先からゆっくり上部へ誘導する
この時、愛犬のお尻が下がってお座りをした状態になります。お座りをしない子は優しくお尻を下げてお座りさせます。落ち着きがない子や、後方に下がっていってしまう子は、愛犬の背後に壁がある状態にすると、後方に下がれないのでお座りしやすくなります。
3.上手にお座りできたらよく褒め、持っていたフードをご褒美として与える
4.繰り返しお座りさせ、確実に覚えたらお座りの合図を教える
誘導するフードを鼻先に出す直前に「オスワリ」の声かけをします。お座りができたらオーバーに褒めてご褒美を与えましょう。
◎待ての仕方
1.リードを着けお座りさせたまま「マテ」の声かけをする
2.リードを持ちながら静かに一歩下がる
3.数秒待てたら「ヨシ」と声かけをして、待てを解除しご褒美を与える
4.徐々に下がる距離、待つ秒数を伸ばしていきます
◎伏せの仕方
1.自分の片足でアーチをつくる
2.アーチをつくった足の下に、おもちゃまたはフードを見せる
3. 自然と伏せの状態になるよう愛犬を足の下に潜らせ、おもちゃ、フードで誘導する
4.すぐに褒めご褒美を与える
5.確実に伏せができるようになったら誘導する前に「フセ」と声かけをして伏せをさせる
6.上手にできたら伏せをした状態のまま褒めてご褒美を与える
◎お手は覚えなくていいの?
「お手」といえば犬への命令で最も知られているうちの一つで、犬を飼ったことがある人であれば、一度は覚えさせたこともあるのでは?実は「お手」は「しつけ」ではなく、犬の習性を利用した「芸」であるとされ、しつけとして覚える必要はないと言われています。しかし一説では、いわゆる「コミュニケーション」の一つであり、人間の言葉を理解していることを証明するための手段と言われています。どちらにせよ生活の中で必須のしつけではないため、余裕があれば覚えさせるくらいの認識で問題ありません。
⑧お留守番
これまでは、愛犬と飼い主が一緒に行えるしつけが中心でしたが、留守番のしつけは愛犬が一人で行う必要があり、しつけの方法もこれまでのものと大きく異なります。そもそも犬は群れで生活をする動物ですので、急に飼い主がいなくなると、一人にされて不安や退屈から家の中でイタズラをすることが多いです。イタズラをしないようにと、ケージに入れて留守番させたとしても、留守中に“無駄吠え”を続けるワンちゃんも多く、飼い主にとっては気が気じゃないですよね。留守中の“問題行動”もある程度しつけで対策ができますのでご紹介していきます。
◎短時間からの留守番の練習
1.ケージに入るよう誘導する
2.ケージに入ったことに対して褒めてご褒美を与える
3.声をかけずに外出するフリをする
4.一定時間後、何も言わずに戻る(数秒から試してみる)
5.吠えないでいたら褒めてご褒美を与える
◎知育トイってなんですか?
“知育トイ”とは、おもちゃの中におやつやフードが入れられるおもちゃのことで、固すぎず、壊れにくいゴム素材のものが多いです。ゴムなので床で遊んでも静かに遊べるのが利点で、弾力性もあり、子犬でもケガをしにくいおもちゃです。中に入っているおやつを簡単に食べることができないので、頭を使って取り出そうと集中します。その間に家を出るとワンちゃんが退屈しないで無駄吠えを防止できるでしょう。ただし、最初に知育トイを与える時は必ず様子を見て、おもちゃに誤飲や破損の危険性がないかどうか確認しておきましょう。
さいごに
基本的なしつけを学ぶことによって、お散歩、病院、旅行といった外出時にもワンちゃんが同行できるようになり、犬を飼ったからといって「もう旅行には行けないね」なんて心配も不要になります。最近は犬同伴OKの大型ショッピングモールやペットと泊まれるペット宿も増えており、昔に比べてワンちゃんとの遠出がしやすくなってきています。連れて行った先でトラブルや迷惑にならないためにも、事前にしっかりとしつけをしておきましょう。
著者/ブリーダーナビ編集部