犬はどんなものでもなめる動物です。
その理由はコミュニケーションや愛情表現など様々で、ただなめているという行動からだけでは判断することができません。
今回は、犬がなめる理由の紹介や、なめ癖をやめさせるための注意方法を解説していきます。
犬がなめるのはどうして?
犬が顔や口などをなめるのは、基本的に好意を表す行動です。
とはいえ、ポジティブな理由だけでなく、ストレスでもなめることがあるため、その時どんな気持ちなのか、愛犬の行動や仕草から気持ちを理解する必要があります。
ここでは、犬がなめる理由を解説していきます。
信頼の証
犬が人間をなめるのは、その相手を信頼している一種の愛情表現です。
特に顔や口をなめてくる場合は、この意味合いが強いでしょう。
構ってほしい
犬は飼い主をなめることで、「構ってアピール」をしてきます。
「テレビを観ていたりPCで作業をしているときに限って、愛犬がちょっかいをかけてくる」という経験をした飼い主さんも少なくないでしょう。
こんな状況のワンちゃんは、飼い主さんに「構ってほしい」という欲求の現れです。
こうした場合は、主に手をなめてきます。
相手を落ち着かせるため
犬が自分の体や手をなめるのは、ストレスを感じて自分を落ち着かせるための行為です。
特に、周囲にほかのワンちゃんがいる状態でこうした行動を取るようなら、カーミングシグナルというコミュニケーション手段の意味合いがあります。
相手をなめる場合は、その子に「落ち着いて」という気持ちを伝えようとしていると考えられます。ちなみに、これはその犬だけではなく、その飼い主さんにも「落ち着かせてあげてほしい」という意味が込められています。
ニオイを確認している
犬といえば嗅覚が鋭いことで知られる動物ですが、気になるニオイがするとその対象をなめてみようとします。これは、ニオイに加えて味でも確認しようとしているのでしょう。
食べ物はもちろん、おもちゃなども対象となります。
犬は何でもなめる?
犬が物をなめるのは、対象のニオイが気になる場合です。
例えば、落としてしまった食べ物のニオイがカーペットやソファに残ってしまい、そのニオイに興味を持ったワンちゃんが、そこをなめることがあります。
また、なめることで飼い主の気を引こうとしているのかもしれません。
なめる場所でわかる理由
なめる部位 | 気持ち | 概略 |
---|---|---|
飼い主の顔 | 大好き | 愛情表現の一種 |
飼い主の口 | 愛情、信頼 | 愛情表現、または安心するため |
飼い主の手 | 寂しい、構ってほしい | 一緒に遊んでほしい、寂しい気持ちの表れ |
飼い主の足 | 構ってほしい | 飼い主の気を引きたい |
飼い主の鼻や耳 | 美味しい | 飼い主の匂い、味がする |
自分の前足 | 退屈 | 暇を持て余して気を紛らわせている |
自分の鼻 | ご飯を食べたい | 人間の舌なめずりと同じ |
床や家具 | 美味しそうな匂いがする | こぼした食べ物の残り香を嗅いでい |
赤ちゃん | 心配 | 泣いている赤ちゃんをなだめようとしている |
他のワンちゃん | 遊んでほしい、敵意はない | 友好関係を築こうという意思表示 |
飼い主の手をなめる理由
ワンちゃんが飼い主の手をなめる理由は「一緒に遊んで欲しい」「寂しい、構ってほしい」などの意味があり、飼い主に甘えたい時の行為です。飼い主の手はワンちゃんにとって、撫でてくれたりおやつをくれたりする、直接愛情を与えてくれるものになります。そのため、愛犬に手をなめられるということは、信頼されている飼い主の証といえるでしょう。
逆にいえば、手をあげるなど怖い思いをさせたりすれば、飼い主の手はワンちゃんにとって恐怖の対象になることもありえます。手を近づけても、なめるのではなく唸ったり噛んだりするような場合は、人間の手に嫌な思いをさせられたことがある証拠です。
予防接種や爪切りなど、やむなく嫌なことを我慢させてしまった場合は、その後思い切り褒めてあげたりおやつをあげたり、良い記憶で上書きするようにしましょう。
飼い主の足をなめる理由
ワンちゃんが足をなめるようなら、それは一緒に遊んでほしいときなど「構って」というサインです。同じ意味で手をなめる子もいますが、この違いは個体差による部分も大きいでしょう。
また、足をなめる独自の理由として、足の匂いがあります。
ワンちゃんは、人間の感覚からすれば臭い匂いを好む傾向があるので、もしも愛犬が足をなめてくるようなら、それは足が臭いということなのかもしれません。
とはいえ、愛犬に好かれているのは間違いないので、少々複雑ですね。
飼い主の鼻や耳をなめる理由
他の部位と違い、ワンちゃんが鼻や耳をなめる場合、人間の鼻水や耳垢などの味を求めてなめているかもしれません。人間からすれば眉をひそめてしまうような話ですが、こうした味を好むワンちゃんは意外と少なくないようです。
もちろん愛犬に好かれている証拠ではありますが、頻繁に耳や鼻をなめられるようなら、少し気を付けた方がいいかもしれませんね。
自分の前足をなめる理由
ワンちゃんは、自分自身の体をなめて「グルーミング(毛づくろい)」をしますが、どこをなめているかで、その時どんなことを感じているのかが分かります。
例えば、前足をなめているようなら、退屈で暇を感じているかもしれません。これは、人間がペンを回すなどの手遊びをするのと同じ理屈ですね。手をなめながら上目遣いでジッと見つめてくる場合は、「退屈だから構ってほしい」という意思表示なので、一緒に遊んであげるといいでしょう。
また、ケガや病気などなんらかのトラブルがある場合は、しきりに同じ場所を舐め続けます。ずっと同じ場所をなめていることに気付いたら、確認して動物病院で診てもらうといいでしょう。
床や家具をなめる理由
ワンちゃんがなめる対象は、自分や飼い主だけではなく、床や家具などの物が含まれることも。その理由として、こぼした食事が染みついた食べ物の匂いが考えられます。
室内とはいえ、衛生的に考えるとこれはよくありません。
予防のためにも、匂いまで含めてしっかりと掃除をするようにしましょう。それでもなめられてしまうことを考えて、使用する掃除用具は犬の健康に配慮した物を選んでください。
物をなめる理由として、ほかにも「退屈している」「ストレスを感じている」「飼い主の関心を引くため」なども考えられます。
赤ちゃんをなめる理由
ワンちゃんのなめるという行為には、「落ち着かせる」という意味があります。犬同士のコミュニケーションに使われる「カーミングシグナル」の一種でもあり、人間に対しても使われることもあります。
これは人間の赤ちゃんも対象になり、ワンちゃんは赤ちゃんが泣いているとなめることがあります。これは、赤ちゃんをなだめようとするとともに、飼い主に赤ちゃんを落ち着かせてほしいという意味もあるのです。
家族をなめるのは親愛の証でもありますが、場合によっては細菌感染の恐れがあるため、不用意に赤ちゃんをなめるのは止めさせた方が良いでしょう。免疫が出来上がっていない赤ちゃんを、感染症のリスクにさらすことになりかねません。
飼い主をなめてきたときの注意点
かわいい愛犬になめられるのは、飼い主としては嬉しいものです。
しかし、犬の唾液から病気に感染してしまう恐れがあるため、愛犬がなめる場所には注意が必要です。
顔や口元はなめられると細菌感染しやすく、特に免疫力が落ちている場合は注意してください。
基本的にポジティブな行動とはいえ、過剰になめてくる場合は止めさせる必要があるので、覚えておきましょう。
なめ癖をやめさせる方法
愛犬になめられるのは飼い主としては嬉しいものですが、それが癖といえるほどに執拗な場合はなめ癖を止めさせることをおすすめします。
とはいえ、ただ「やめて」と伝えても、簡単に癖が直るわけではありません。
では、どんなやり方をすればなめ癖をやめさせることができるのでしょうか。
注意は落ち着いた声で
大きな声や高い声で注意するのは、驚かせたり逆効果になったりするので、低く落ち着いた声で注意するようにしましょう。
しかし、なめるのは愛情表現でもあるので、無下にするのはかわいそうです。
なめる以外に、撫でるなど別の方法でスキンシップを取るようにすると良いでしょう。
そのうえで、「おすわり」や「待て」などの指示で止められるようにしつけておければベストです。
構わない
なめられたことでリアクションを取ったり構ったりすると、ワンちゃんはそれを喜んでしまい、止めさせるどころが逆効果になる恐れがあります。
そのためなめられても一切構わず、目を逸らして愛犬が落ち着くのを待ちましょう。そして、静かになったら褒めたり遊んだりしてあげてください。
これを繰り返すことで「なめなければ遊んであげる」ということを覚えてくれるでしょう。
コミュニケーションを増やす
愛犬が「構って欲しい」とアピールする意味でなめてくるようなら、コミュニケーションが不足しているかもしれません。
そんな時は、退屈を感じないようにコミュニケーションの時間を増やすと良いでしょう。
例えば、ひとりにする時間が長かった日は、帰宅後やその翌日に普段以上に褒めたり遊んであげたりしてあげてください。
苦手なニオイを利用する
愛犬がなめてはいけない物をなめて困るようなら、それに犬が苦手とする柑橘系の香りをつけておくのも有効です。
犬はミカンやレモンなどの香りが苦手なので、嫌がるけど害にはならない香りを吹き付けておけば止めさせられるしょう。
霧吹きを使う
どうしてもなめるのを止めてくれないようなら、犬がなめてくるタイミングで鼻先に向けて霧吹きを使うのも効果的です。
直接嫌がることをするためかわいそうですが、あくまでも水なので害はありません。しかし、顔が濡れるのを嫌がる犬は多いので、効果は期待できるでしょう。
まとめ
犬にとって、なめるのは自然な行為です。
しかし、なめる場所によっては飼い主を病気に感染させたり、ワンちゃん自身を体調不良にしてしまうこともあります。そのためなめ癖があるようなら、一度行動を見直した方が良いでしょう。
まずはなめる原因を知り、飼い主にとってもワンちゃんにとっても、安心で安全な生活ができるよう、今回の内容を参考に適切に対処するようにしましょう。
著者/ブリーダーナビ編集部