老犬になると、さまざまなケアが必要になります。特に大きな問題の1つが、高齢になり変化するトイレ事情です。今回は、老犬になり改めてしつけたいトイレトレーニングやトイレを失敗、粗相した時の対策、トイレ周りの環境、おむつの利用について解説します。
高齢になり変化するトイレ事情
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高齢になるとトイレの失敗が増えてしまいます。これは特別なことではなく、多くのワンちゃんで見られる変化です。
では、具体的にどのような変化が現れるのでしょうか。
トイレが我慢できなくなり、回数が増える
若い頃は問題なかったのに、年齢を重ねてトイレの失敗が増えてきたようなら、それは老化による変化かもしれません。
主な原因として考えられるのは泌尿器官の筋力低下ですが、視力や嗅覚が衰えてトイレの位置が分からなくなっている可能性や、記憶力の低下や認知症などもあるでしょう。
また、何かしらの病気が原因で排泄に変化が現れている可能性もあるので、心配なら獣医さんに相談してください。
ワンちゃんのトイレに関して、以下のような状況が増えてきたと感じたら、老化を疑いましょう。
・我慢できなくなる
・トイレの回数が増える
・トイレ場所を間違える
・トイレのルールを間違える
・便の状態が不安定になる
・おしっこ、排便に時間がかかる
・興奮したり吠えたりすると、漏らしてしまう
【トイレのしつけ】高齢犬のトイレは外から中へ
屋内で生活しているワンちゃんでも、排泄だけは外で行う子もいます。
外での排泄が習慣化しているワンちゃんは散歩まで排泄を我慢しますが、老犬になるとそこまで我慢することができなくなり、粗相が増えていくかもしれません。そのため、室内でトイレができるように改めてトイレトレーニングを施してみることをおすすめします。
室内でトイレをさせる
愛犬のトイレ失敗を減らすためにも、飼い主の負担を減らすためにも、できるだけ早いうちから室内でのトレーニングを始めるといいでしょう。
老犬になると、それまでの生活習慣を変えるのは簡単ではありません。そのため、まだ問題なくトイレができるうちに、少しずつ室内のトイレへ移行するトレーニングを行うのが理想です。
具体的なトイレトレーニングの方法は、下記のページで解説しています。失敗しても怒ったりせずに、上手に室内で排泄ができるまで根気よく付き合ってあげましょう。
【子犬のトイレトレーニング】しつけ方法・うまくいかない時の対処法
トイレの失敗、粗相対策
高齢になると、それまで問題なくトイレができていたのに、失敗や粗相が増えることがあります。これはどのワンちゃんにも起こりうることなので、飼い主さんは慌てることなく適切な対応をしてください。
トイレを失敗するようになったら
・筋力の低下
老化が原因で筋力が低下すると、トイレに向かっても間に合わなくなります。
対策としては、フローリングなどの滑りやすい床の場合、絨毯やマットなどを敷いて歩きやすいようにしてあげましょう。
ただし、粗相してしまった場合を考えて、後始末が楽になる洗濯可能なものがおすすめです。また、トイレの場所を1ヶ所だけでなく、複数用意するのも良いでしょう。
立ち上がることが難しいようなら、市販のハーネスを使ったりバスタオルをお腹の下に通したりして、歩行をサポートしてあげてください。
・トイレの場所が分からない
ワンちゃんはその鋭い嗅覚でトイレの場所を判断しますが、高齢になると視覚や嗅覚が衰えてしまい、トイレの場所が分からなくなることがあります。
そうした場合は、愛犬の嗅覚をサポートするために、ペットシートにおしっこの匂いをつけてトイレの場所が分かりやすくしておくといいでしょう。
ただし、ワンちゃんによっては匂いがついていると場所を避ける子もいるので、注意してください。
自分でトイレができなくなることも
筋力が低下してしまうと、排便時の姿勢を保つことも難しなるうえ、排尿排便のための筋肉も衰えてしまい、時間がかかるようになったり自力ではできなくなります。そうなると、飼い主が体を支えてあげたり、マッサージや圧迫で排泄を促してあげる必要が出てきます。
効果的な圧迫方法は犬種や個体差によって差があるので、獣医さんに相談して適切な圧迫方法を教えてもらうと安心です。
ワンちゃん自身も、自分の体の変化に戸惑うので、飼い主さんが苛立つことなく根気よくサポートしてあげてください。
お尻が汚れてしまうようなら
老犬でなくとも、毛が長い犬種はトイレでお尻のあたりを汚してしまいがちです。汚してしまわないように、肛門周りやしっぽの付け根付近の毛は、短く刈り込んでください。
ただし、ワンちゃんの被毛は皮膚を守る役割があるため、あまり短く刈ってしまうと、汚物で皮膚がかぶれさせてしまう恐れがあります。
清潔に保ちつつ皮膚を守れるよう、毛の長さを調整するといいでしょう。
もしも汚してしまった場合は、ウェットティッシュや水洗い不要のフォームを使い、皮膚を傷めないよう軽く拭き取ってください。
ひどく汚れている場合は、負担にならないようシャワーで洗ってあげましょう。寝たきりの老犬の場合、すのこなどの上に寝かせ、頭を高い位置に置いて顔が濡れないようにしてあげてください。
下痢や便秘が増えたときは
まずは、最悪の場合を想定して病気を疑い、動物病院で診察してもらってください。
病気ではない場合、老化による消化吸収力の低下が考えられます。
消化に良いフードに切り替えたり、一回の食事量を減らして回数を増やしたりして、内臓への負担を減らしてあげましょう。
また、「水分を多めに取らせる」「おなかをマッサージしてあげる」なども有効です。
トイレ周りの環境を見直す
高齢になり、愛犬がトイレを失敗するようになったら、一度生活環境を見直してみましょう。例えそれまで問題なかったとしても、トイレの位置など、ちょっとしたことが失敗の原因になっているかもしれません。
トイレ環境を少し工夫したり、ちょっとした手助けをしたりするだけで改善することもあるので、まずは愛犬の行動を注意深く観察してください。
トイレで滑らないように
ワンちゃんのトイレはトイレシートです。そのため、敷いた場所によってはとても滑ることになり、踏ん張れないかもしれません。若いワンちゃんでも滑りやすい床は関節に負担がかかりますが、足腰の筋力が衰え肉球が乾燥した老犬ともなれば、かかる負担は余計です。
そのため、滑りやすいフローリングの上などに、そのままトイレシートを敷いている場合は、シートを滑りにくくする防水タイプのマットを下に敷くなどの工夫をしてあげましょう。
トイレの設置場所を変えてみる
上でも紹介しましたが、老犬になると筋力が低下するので、トイレに間に合わなくなることもあります。例えば、普段生活スペースとしている部屋とは離れた場所にトイレを設置しているようなら、まだ若い頃であれば問題なくとも老犬には遠すぎるかもしれません。
ワンちゃんのトイレは、犬の歩幅で5~10歩程度以内の場所に設置するのがベストといわれています。老犬のトイレなら、なるべく普段過ごしている場所の近くに設置してあげるといいでしょう。
ただし、突然トイレの場所を変えてしまうと、ワンちゃんも戸惑ってしまいます。トイレの設置場所を変更する場合は、いきなり大きく移動させるのではなく、数日かけて少しずつ変えるようにしましょう。
おむつを履いてそれまでと同じ生活を
老犬のトイレ対策として環境を作り変えても、行動範囲が狭くなるなど、大なり小なりそれまでと生活スタイルは変える必要があるでしょう。
しかし、飼い主の心情としては、可能な限りそれまでと同じ生活をさせてあげたいと思うもの。そこで、おすすめしたいのが「おむつの着用」です。
おむつを利用する際のポイント
老犬のお漏らし対策として、有効なのがおむつです。
おむつをしているワンちゃんを「かわいそう」と思う人もいるようですが、それまでと変わらず行動できるのはメリットと言えます。
慣れるまで最初は嫌がるワンちゃんも少なくないですが、最近は、犬用のおむつもお洋服感覚で履かせてあげられるので、一度試してみてはいかがでしょうか。
おむつは、今まで通り自由にすごせて部屋を汚さずにすむ唯一の方法なので、ぜひご一考ください。
まとめ
ワンちゃんも、高齢になればさまざまな面が衰え、トイレを失敗しやすくなります。そのため、改めてトイレトレーニングを行うか、おむつなどを使用するなどして対処しなければなりません。
愛犬が年老いてトイレの失敗が多くなってきたと感じたら、今回の記事を参考に、トイレを中心とした生活環境を見直してください。
老犬の介護については、下記のページでも解説しています。こちらも参考にしてみてください。
著者/ブリーダーナビ編集部