ワンちゃんを飼ううえで、飼い主を悩ませる困った癖の1つが噛み癖です。
子犬であればまだ力も弱く大事にはなりませんが、成犬になっても続くようであれば、真剣に直すことを考えるべきでしょう。
今回は、ワンちゃんがそんな困った癖をしてしまう理由から、直し方・防止方法まで詳しく解説いたします。
人を噛んでしまう理由とは?
子犬が飼い主を甘噛みするのは良くあることです。これを飼い主に甘えている行動と考えれば可愛いものですが、放っておくと噛み癖になり、問題行動になってしまいます。
噛み癖を直すためには、まずワンちゃんがなぜ人間に噛み付くのか、その理由を知ることからはじめましょう。
自分がリーダーだと思っている
元々群れで行動する犬は、集団の中で誰がリーダーかを決め、明確な上下関係を決めることで、群れの秩序を保っています。
そのため、もしも愛犬に噛まれるようなら、それは家族という群れの中で飼い主を自分より下の存在と考えているのかもしれません。つまり、自分が群れのトップであると認識し、噛むことで自分に従わせようとしたり要求を通そうとしたり、リーダーとしての役割を果たそうとしているのです。
縄張りを守ろうとしている
家に来たお客さんを威嚇したり噛み付こうとしたりするようなら、ワンちゃんは自分の縄張りを外敵から守ろうとしているのかもしれません。この場合、家が自分の縄張りであると考えているのでしょう。
同様に、自分の物であるおもちゃや食器などに触れられることを嫌がり、攻撃的になる子も珍しくありません。
恐怖やストレスを感じている
恐怖心が攻撃性に転じて、噛み付くという行為として表れることもあります。これはワンちゃんに限らず、人間や他の動物でもあることなので、理解できる方もいるでしょう。
このタイプは生来の臆病な性格や、体罰によるしつけが原因になることが多いようです。
また、成犬や老犬が新しい環境に馴染めずストレスを感じてしまい、それが噛み付くという行為として表れる場合もあります。この場合、ストレスの原因が対象となることも多いでしょう。
なにかを要求している
ワンちゃんは言葉を使って話すことができないため、飼い主に何かしてほしいときは吠えたり噛んだりして意思を伝えようとします。その方法によっては問題行動になるため、その場を収めるためだけに要求を飲んでしまうと、癖になってさらなる問題に発展しかねません。
ケガや病気の可能性も
「いつもは触らせてくれるのに、今日は触ろうとしたら噛み付かれた」という場合は、触ろうとした場所に何かしらの痛みを感じている可能性があります。ワンちゃんは、ケガや病気で痛みを抱えている場合、触られることを嫌がって抵抗します。ある日突然噛み付かれたら、それが原因かもしれません。
「同じ場所をしきりに気にしている」「触れようとすると強い抵抗にあう」という場合は、何かしら不調を抱えているかもしれないので、一度動物病院で診察してもらいましょう。
噛み癖を治すしつけ方
ワンちゃんが人間に噛み付く理由を理解したら、噛まないようにしつけていきましょう。
噛み癖を直すには、愛犬との信頼関係を築いたうえで、噛んではいけないと時間をかけて教えていく必要があります。
飼い主がリーダーということを理解させる
ワンちゃんにとって最も身近な人間は飼い主です。まずは、飼い主に噛み付かせないようにすることが、ひいては他の人に対しても噛み付かないようにさせる近道になるかもしれません。
まずは、「家族という群れのリーダーは飼い主」ということを理解させる必要があります。
そのためには、褒める時は思い切り褒め、ダメなことはダメという一貫したしつけを心掛けましょう。何よりも愛犬との信頼関係を築くことができれば、自然と「飼い主=リーダー」と認識してくれるようになります。この関係を築くことができれば、愛犬は縄張りを守る責任から解放されるので、縄張り意識から来客に噛み付くようなこともなくなるでしょう
愛犬との接し方を見直す
愛犬の噛み癖を直すためには、日頃の接し方を考え直す必要があるかもしれません。
例えば、叱り方一つ取っても、「手を上げない」「静かに低い声で叱る」などを心掛けるようにしましょう。特に、体罰は絶対にしてはいけません。
動物には防衛本能があるため、「体罰=攻撃」に対して自分の身を守るため攻撃に転じることがあります。これがエスカレートすると、撫でようと手を掲げただけで「叩かれる」と思うようになり、恐怖心から噛んでしまうようになるかもしれません。
噛んでも要求が通らないことを覚えさせる
飼い主に何かを要求して、聞き入れてもらえないことに苛立ち噛み付く場合、それで要求に従ってしまうのは一番の悪手です。噛まれたことで一度でも要求を通してしまうと、「噛み付けば従ってくれる」と認識するようになり、それ以降何かある度に噛み付くようになってしまいます。
こうした悪い考えを根付かせないために、噛み付かれたら短い言葉でしっかりと叱り、口を離したら褒めてあげてください。噛んでも良いことはないと教えましょう。
物を噛んでしまう理由とは?
人に噛み付くのは直ちに矯正する必要がありますが、対象が家具などの物であっても見過ごすことはできません。ワンちゃんが物を噛む理由を探っていくと、日常の生活環境を見直す必要があるかもしれないのです。
ストレスが大きな原因
ワンちゃんにとって噛むという行為は自然な行動ですが、全てのワンちゃんに噛み癖があるわけではありません。
では、ソファやカーテンといった家具、物に噛み付くのはなぜなのでしょうか?
実は、子犬と成犬とでは、物に噛み付く理由は違うといわれています。
子犬の噛み癖の多くは、歯の生え変わりに起因する本能的なもの。子犬は、生後3週齢~8ヶ月齢になると「歯の生え変わり時期」が訪れます。この時、歯茎に感じるムズムズとした感覚を紛らわせるために、さまざまな物に噛みつくのです。
一方、成犬が噛み付く理由は子犬とは全く異なり、主な理由として「暇だから」「構って欲しいから」「ストレス発散のため」が挙げられます。
中でも、ストレスが原因で噛み付くケースが最も多いので、噛み付き癖が気になるなら愛犬のストレスチェックをしてみるといいかもしれません。
物への噛み癖を直すしつけ、防止方法は?
物への噛み癖は、放っておくと室内をグチャグチャにされてしまうだけでなく、場合によっては愛犬を危険に晒すことになるかもしれません。
では、どうやってしつければ良いのでしょうか。
生活環境を見直す
噛み癖の大きな要因の1つであるストレス対策として、生活環境の見直しが有効です。可能な限り愛犬がストレスを感じずにすむような環境を整えてあげることができれば、自然と噛み付く頻度も少なくなっていくでしょう。
例えば、カーテンを遮音カーテンに替えることで外からの音が届きにくくなるので、音に対してストレスを感じやすい子であれば大きくストレスを抑えることができます。同時に、外に漏れる鳴き声の音量を抑えられるので、ご近所への配慮にもなるでしょう。
また、噛みつかれて困る物があれば、ワンちゃんが見つけられない場所に隠してしまうのもおすすめです。家具などの大きな物は無理でも、手に持てる程度の物であれば有効な方法といえます。
このほか、他の物に噛み付かないように、噛まれても良いおもちゃを用意するのも有効です。最近は犬が噛むためのおもちゃもたくさんあるので、それで「噛みつきたい」という欲求を満たしてあげれば、他の物には噛み付かなくなるので一考の余地はあるでしょう。
ダメということを認識してもらう
ワンちゃんにとって噛むのは自然な行為です。そのため、何も教えずしつけもしていなければ、疑問に思うこともなくさまざまな物に噛み付いてしまうでしょう。
犬の群れであれば、親や兄弟をはじめとしたコミュニティーで自然と学んでいくことですが、飼い犬であれば飼い主が教えない限り学習する機会はありません。
だからこそ、愛犬には何を噛んではダメなのか、根気強く教えることで、ルールを学んでもらう必要があります。
ストレスを発散させる
噛み癖の最も大きな原因の1つがストレスです。そのため、外で思い切り一緒に遊んであげるなど、ストレスを解消してあげることができれば、噛み癖が直ることも珍しくありません。毎日の散歩の時間や距離を長くしてみたり、一緒に遊んであげる時間を増やしてみるのも良いでしょう。
また、おもちゃを与えるのも有効です。上で紹介した噛み付いても大丈夫なおもちゃもあるので、利用してみるのもいいでしょう。
噛み癖にスプレーは有効?
ワンちゃんの噛み癖を直すためのグッズとして知られているのが、いわゆる「噛みつき防止スプレー」です。
このスプレーは、犬が苦手とする味がするスプレーで、噛み付いてほしくない場所や、頻繁に噛み付く物に吹き付けることで、自発的に口を離すように仕向けるグッズです。
市販品の他、酢を使うことでスプレーを自作することもできます。
スプレーを使う時のポイント
噛みつき防止スプレーは、ただ吹き付ければある程度の効果が出るものの、正しい使い方をしないと完全に止めさせることはできません。
ポイントは大きく以下の3つです。
・最初は大量に
・近づかなくなるまで続ける
・噛む直前に使う
最初に強烈なインパクトを与えて、「スプレーの匂い=不快」と記憶させましょう。はじめの頃は量を惜しまず、過剰と思えるくらいに吹き付けてください。何回か繰り返せば、匂いを嗅ぐだけで噛むことを止めるようになります。ただし、完全に学習する前に止めてしまうと再開するかもしれないので、近づかなくなるまでスプレーを続けてください。
中途半端は止め、対策を徹底しましょう。
また、スプレーは揮発性が高いため、効果の持続時間は思ったより長くありません。
噛み付くものをずっとスプレーで濡らしておくわけにはいかないので、噛む直前に吹きかけるようにしてください。
ワンちゃんが我慢できる程度の味に薄まってしまうと、十分な効果は期待できません。ケージから出す直前や外出から帰宅する直前に、気づかれないようさり気なくスプレーしましょう。
お酢でスプレーを作る際は濃度に注意
噛みつき防止スプレーは、市販の物だけでなく自宅にある物で作ることもできます。ワンちゃんが苦手とする味をしていて、かつ害のないものを使いましょう。代表的なものは「お酢」で、100倍に薄めたものをスプレーにして使います。
これ以上濃くするとワンちゃんには刺激が強すぎるので、濃度には十分注意しましょう。
自宅にあるもので作れるので安上がりではありますが、愛犬に使用することを考えると、市販品を使った方が安心かもしれません。
ワンちゃんは嗅覚が鋭い動物です。
苦手とする匂いもあるので、飼い主として知っておいた方がいいかもしれません。
下記のページではワンちゃんが好きな匂い・嫌いな匂いについて解説しているので、気になる方はチェックしてみてくださいね。
犬の嫌いな匂いって?鋭い嗅覚はしつけにも活用できる?
まとめ
犬が噛むのは自然な行為です。だからこそ、一度ついた噛み癖を直すのは簡単ではありません。成長して成犬になっても続くようであれば、大きなトラブルに発展する危険もあるので、できるだけ早い段階でしつけておくようにしましょう。
今回掲載した内容以上に詳しく知りたいという方は、ブリーダーに相談してみることをおすすめします。飼育のプロであるブリーダーなら、ワンちゃんの噛むといった行為も熟知しているので、噛み癖の直し方について、初心者にも分かりやすく解説してくれると思います。
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著者/ブリーダーナビ編集部