成犬の8割が歯周病にかかる?
私たち人間の病気で最もポピュラーともいえるのが”歯周病”。そんな歯周病、人間だけの病気かと思ったら大間違い!実はワンちゃんにも歯周病があるのです。しかも、3歳以上の成犬の8割が歯周病を患っている、もしくは予備軍といわれています。
ではどうしてヨークシャーテリアを始め、多くの犬種は人間のように歯周病を患ってしまうのでしょうか。そもそも歯周病はどんな病気なのか、予防方法はないのか、歯周病の気になることについて詳しく解説していきたいと思います。
お口の病気を侮ってはいけません!
本当はとても恐ろしい”歯周病”
photo by hj_west
TVのCMや歯みがき売り場でよく見たり聞いたりする『歯周病』とは一体どんな病気なのでしょうか。
【歯周病とは】
歯のまわりの歯周組織と呼ばれる、歯肉(しにく)・歯根膜(しこんまく)・歯槽骨(しそうこつ)・セメント質に細菌が感染して起こる炎症性疾患のことを指します。
また歯茎の炎症だけであれば『歯周炎』、まわりの骨まで炎症していると『歯周病』と呼ばれます。
どうして歯周病になるの?
最大の原因は『歯垢(しこう)』と『歯石(しせき)』です。これらはよく食べかすと思われがちですが、実は全くの別物なのです。
●歯垢
歯の表面を指で触ってみてください。ネバネバしたものが付着してきたらそれは「歯垢」であり、別名”プラーク”とも呼びます。
私たち人間の場合は、食後約4~8時間、ワンちゃんの場合は約6~8時間で歯垢が作られます。歯垢は細菌の塊であり、1gあたり約1,000億以上の細菌がいるといわれています。
歯みがきをせずにそのまま放置をすると、歯の表面にあるエナメル質を菌が作った酸で溶かしてしまい、虫歯などを引き起こす可能性が高くなります。
●歯石
歯垢が唾液中のミネラルと沈着すると、約48時間後には歯石となります。歯石は歯と歯ぐきの間や歯と歯の隙間にできやすく、とても硬いため簡単には落とすことができません。また、歯石を放置することで細菌がどんどん増殖し、虫歯や歯周病となっていきます。
歯周病になるとどんな症状が出るの?
下記のような症状があったら、もしかしたら歯周病かもしれません。
【愛犬のお口の中をチェックしてみよう!】
□汚れが目立つ
□生臭いニオイがする
□歯のつけ根が炎症している
□歯ぐきから出血している
□歯がグラグラしている
□歯が抜け落ちた
□歯の根元に膿が溜まっていて膨らんでいる
□皮膚に穴が開いている
□顎の骨が骨折している
「歯が抜け落ちた」「歯の根元に膿が溜まっていて膨らんでいる」「皮膚に穴が開いている」「顎の骨が骨折している」の4つに関して当てはまる場合は、歯周病がかなり進行してしまっている証拠です。すぐにかかりつけの動物病院を受診しましょう。
歯周病が引き起こす恐ろしい病気
体全体を歯周病が蝕む
歯周病を放置していると、歯が抜け落ちるだけではありません。体の様々な箇所が悲鳴を上げ、歯以外の箇所も病気を引き起こしてしまうのです。
●心不全/腎不全
歯周病菌が血液中に入り込んでしまうと、動脈硬化を誘導する物質が出て血管内にプラークができます。そうすると血液の通りが細くなり、心筋に血液供給ができなく死に至ることがあります。
●口腔鼻腔瘻(こうくう・びくうろう)
ワンちゃんの口と鼻を隔てている骨はとても薄いため、歯周病によって骨が溶けて溝ができます。
この状態が進行して鼻の粘膜まで到着してしまうと、歯根から鼻腔までにかけて溝がトンネルの様な状態になり鼻水や青っぱなが出てきます。
●外歯瘻(がいしろう)
歯周病によって引き起こされた炎症が歯の根っこの周囲まで及び、骨が溶けて皮膚に穴が開いてしまいます。
●内歯瘻(ないしろう)
歯周病の炎症が悪化すると、歯周組織が破壊されて歯肉に穴が開いてしまいます。
ヨークシャーテリアを始めとする小型犬は要注意!
歯周病が悪化すると、ヨークシャテリアなどの小型犬は『下顎骨骨折(かがくこつこっせつ)』を引き起こす可能性があります。
【下顎骨骨折とは】
小型犬は下顎骨の厚さに比べて歯が大きいため、歯の根っこが下顎骨の下のラインとほぼ同じ高さの位置にあります、そのため歯周病が進行すると、下顎骨が重度に溶け出し硬いものを噛んだり、外部からの衝撃が加わったりしただけで下顎骨が簡単に折れてしまうのです。
著者/ブリーダーナビ編集部