保護犬を迎える【里親制度】をご存じでしょうか。
ワンちゃんをペットショップやブリーダーから購入するのではなく、何らかの理由で保護施設に預けられたワンちゃんを里親として迎えるための制度です。
Webサイトなどの広告で、「子犬を譲ります」という文言を目にしたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
本記事では、どうすれば里親になれるのか、保護犬を迎えるための里親制度について詳しく解説していきます。
シベリアンハスキーの里親が募集される理由は?
ある一定以上の年齢の方であれば、「昔よりも野良犬の数が減った」ことに納得してくれるのではないでしょうか。その理由の1つに現在は保護施設などに引き取られているという事実が上げられます。
つまり野良犬になる前に保護される数が増えただけで、飼育放棄されるワンちゃんが減ったわけではないのです。
依然としてなくならない飼育放棄
NPO法人【みなしご救援隊犬猫譲渡センター】の東京支部には、生後1年未満の子犬が持ち込まれる事案が急増していることをご存じでしょうか。
この背景には、年々増加するペット需要に伴う飼育放棄があります。
愛犬家の方であれば眉をひそめてしまうようなこの問題ですが、驚くべきはペットを手放す理由です。「臭い」「飼育が大変」「飼う前のイメージと違った」など、身勝手な理由が少なくありません。
この事態を看過できないとした国は、2021年6月に改正動物愛護法の施行を決定しました。
保護犬の命を救うための里親という選択
それでは、飼育放棄の具体的な数字を見ていきましょう。
環境省が発表した「犬・猫の引取り及び負傷動物の収容状況」によれば、2019年4月1日~2020年3月31日の1年間で確認されたワンちゃんの引取り数は32,555頭でした。
内訳は、3,300頭が飼い主が手放した元飼い犬、29,255頭が所有者不明。この数字だけでも、どれだけ多くのワンちゃんが飼育放棄されているか、お分かりいただけると思います。
「可愛いから」という理由が、ワンちゃんを飼う動機になるのは珍しいことではありません。しかし、それだけではワンちゃんとの生活を継続するのは難しいでしょう。
「ぬいぐるみのように可愛い」といっても、ワンちゃんはぬいぐるみではありません。物ではなく生き物であり、私たち人間と同じ1つの命なのです。
この事実を心に刻み、命と付き合っていくという覚悟があって始めて、ペットを飼う資格があるといえるのではないでしょうか。
飼育放棄されたワンちゃんは、保護犬として新たに迎えてくれる里親を待っています。
これからワンちゃんを飼いたいと考えている方は、里親として保護犬を「迎える」ことも、ぜひ考えてみてください。
シベリアンハスキーの里親になる前の準備・心構え
愛犬ではなくとも、保護犬の存在に胸を痛める方は多いと思います。
飼育放棄されるワンちゃんの数を減らすには、何よりも迎える側、飼い主となる人間が変わる必要があるのです。
では、保護犬を迎えるにあたり、里親はどんな準備・心構えをしておかなければならないのでしょうか。
保護されているワンちゃんのことを理解する
保護犬を迎えるのであれば、その子が保護されるに至った経緯を理解しておく必要があります。
施設に保護されたワンちゃんは、どの子も飼育放棄された過去を持ち、ほぼ例外なく心に何らかの傷を負っています。その傷が原因で人間を信用できなくなっているため、それを理解していないと里親になることは難しいでしょう。
中には、恐怖や警戒から人間に攻撃性と凶暴性を向ける子もいるので、まずは保護団体やブリーダーなどの仲介者に、迎えようとしている子について質問することをおすすめします。
どんな性格で何を好み、どのようなことを喜ぶのか知ることができれば、自ずと接し方も分かってくるはずです。
お迎えするための準備
保護犬を迎えることが決まったら、ワンちゃんに不自由なく生活してもらうための環境を整えておきましょう。
事前に揃えておきたいのは、以下のグッズになります。
- ケージ、サークル
- 食器類
- トイレ
- フード、おやつ
- 首輪、リード
- おもちゃ
場合によっては、以前の飼育環境が劣悪でケージを嫌がることもあります。
そうした点も含めて、仲介者から話を聞いたり施設での生活を見たりしながら、可能な限り負担が少ない環境を整えてあげましょう。
先住犬がいる場合に注意したいこと
これから保護犬を迎えようとしている方の中には、すでにワンちゃんを飼っている方もいらっしゃるでしょう。そうした先住犬がいるご家庭の場合、保護犬との相性に気を付けてください。
犬という動物は元々縄張り意識が強いので、相性次第では一緒に暮らすことが困難になってしまいます。相性は良いに越したことはありませんが、仲良くできない場合は、慣れるまでそれぞれ別々に生活させるようにしましょう。
ある程度しつけが進めば、少しずつ打ち解けられるようになると思います。家庭環境や先住犬との相性は、譲渡前に設けているお試し期間で確認することができるので、ストレスなく生活してもらうために試行錯誤を繰り返しましょう。
里親になるうえでの心構え
上述したように、保護犬の多くは飼い主に恵まれず、人間との信頼関係を築くことができなかった子もいます。保護された施設での生活である程度元気になった子もいるものの、それまでに負った傷が完全に癒えたとはいえません。
こうした経緯を理解したうえで、里親になるためには以下の条件をクリアしている必要があります。
- 一緒の時間を確保できるか
- 飼育に十分な金銭的余裕はあるか
- 献身的にサポートできるか
- 家族や近隣の理解を得られるか
以上を踏まえたうえで、迎えた子の面倒を最期まで見る覚悟、命を預かるという覚悟、強い責任感を持ったうえで育ててください。
全国で募集される里親
平成31年4月1日~令和2年3月31日の間に殺処分された保護犬の数は、32,555頭中5,635頭。その内1,051頭は生まれたばかりの子犬でした。悲しい結末を迎えてしまう子を少しでも減らすために、里親を募集している保護団体や施設、里親募集サイトを以下に紹介します。
・OMUSUBI
年齢やサイズ問わずさまざまな保護犬を紹介している審査制マッチングサイトです。
全国100団体以上の審査を通過した保護団体の情報が掲載されており、その数は審査制マッチングサイトの中でもトップクラス。質問に答えることで、相性の良い子を紹介してもらえる相性診断もあります。
・ペットのおうち
ペットを迎えたい方と、事情によりペットを飼えなくなってしまった飼い主・保護活動者が交流する場所です。犬猫だけでなく、鳥や小動物、爬虫類、魚までの情報を扱っています。
・ペットの命
子犬から成犬まで幅広い年齢、犬種のワンちゃんを紹介しているサイトで、性格、推定年齢、名前から、しつけ情報、ワクチンや病気の有無まで、詳細な情報を掲載しています。
ブリーダーからお迎えするという選択肢も
保護犬の里親になるには、知識や経験の有無、適正や保護犬との相性など、さまざまな条件をクリアしなくてはなりません。このハードルの高さは責任の重さといっても良いでしょう。
条件をクリアすることが難しいようなら、まずはブリーダーから子犬を迎えて、飼い主としての知識や経験を積むことを考えてはいかがでしょうか。
ブリーダーからワンちゃんを迎えることができれば、飼育について多くのサポートを受けることができるため、初心者にこそおすすめしたい選択肢といえます。
まとめ
今回紹介してきたように、保護犬の里親になるのは決して簡単なことではありません。「ワンちゃんが無料で手に入る」と勘違いして、興味本位で安易に考えるべき選択肢ではないのです。
生き物を飼うということ自体が責任を伴うことですが、保護犬を迎えるということは迎えた子のことを最優先に考え、最期の一瞬まで面倒を見る覚悟がなくては、やってはいけないことといえるでしょう。
今回の記事を読んだうえで、改めてワンちゃんを飼うということの意味を考えていただきたいと思います。
著者/ブリーダーナビ編集部