小型犬のパピヨンは病気になりやすい?目や皮膚の病気にはご注意を

パピヨンは病気になりにくい?

小型犬のパピヨンは病気になりやすい?目や皮膚の病気にはご注意を

一般的に、小型犬は遺伝性疾患を抱えている場合が、他の犬種に比べて高い傾向にあります。そうした中でも、パピヨンは小型犬としては例外的に遺伝性疾患が少ない犬種です。
その理由は、パピヨンの先祖犬も大きい犬種ではなかったことに加え、400年以上という長い年月をかけて、ゆっくりと現在の小さな姿に変化してきたことが挙げられます。

そのため、パピヨンという犬種には特有のなりやすい病気というものはなく、気を付けるべきは小型犬全般がかかりやすい病気ということになるでしょう。
例えば、緑内障や結膜炎などの目の病気、膝蓋骨脱臼、逆さまつ毛、水頭症は、小型犬によく見られる病気です。

賢く活発なパピヨンは、訓練競技会に出場する子もいるので、病気だけではなくケガにも気を付ける必要があります。
健康なパピヨンの平均寿命は13~15歳ですが、若い頃から健康を心掛け、いつまでも元気でいられるように、運動や食事管理に気を遣いしっかりした体を作ってあげましょう。

可能な限り長く健康でいてもらうために、本記事ではパピヨンがかかりやすい病気について解説していきたいと思います。

パピヨンも要注意!小型犬が患いやすい骨の病気

早期治療が大切!「膝蓋骨脱臼」

パピヨン

膝蓋骨脱臼は、通称パテラと呼ばれており、ワンちゃんの後肢にあるいわゆる「膝の皿(膝蓋骨)」が外れてしまった(脱臼した)状態です。小型の犬種の場合、内側への脱臼(内方脱臼)が多くみられます。

<症状>
膝蓋骨脱臼の症状は、程度によってグレード1~4の4 段階。程度が軽いグレード1なら症状はほとんどなく自然に治りますが、最も思いグレード4になると骨が変形し歩くことが困難になり足を伸ばすこともできなくなります。

・グレード 1
基本的に膝蓋骨は正常な位置にあるものの、ずれやすい状態です。ずれた骨は自然にもとの位置に戻り、症状は特に見られません。

・グレード 2
膝を曲げると脱臼してしまうことが増えますが、日常生活に支障はありません。たまに
足を引きずるようにして歩く跛行(はこう)がみられます。ズレた骨は外から圧力をかけないと元の位置に戻らず、放置すると膝の靭帯が伸びたり骨が変形したりします。

・グレード 3
基本的に膝蓋骨が脱臼したままの状態で、外圧により一時的に正常な位置に骨を戻すことができます。骨の変形も顕著になり、腰をかがめ、内股で歩くような歩行異常が現れます。

・グレード 4
膝蓋骨は常に脱臼した状態で、元の位置に戻すことはできません。骨の変形により膝が伸ばせなくなり、地面に足を着けることが困難になります。外科手術による対応が必要です。

<原因>
犬種問わず発生しますが、パピヨンなどの小型犬は先天的になりやすい病気です。
後天的な要因として、交通事故などで外から強い衝撃を受けた場合や、栄養障害などが原因の場合があります。

<治療法>
症状やグレードによって、選ばれる治療方法は異なり、まだグレードが低く症状も軽いうちであれば、薬やレーザーを使用して痛みや炎症を抑えます。同時に、食事や日常の環境を整えることで、再発を防ぐことが可能です。
ただし、こうした治療は対症療法なので根本的な解決にはならなりません。
グレードが上がり重度になると、外科手術による対応が必要になります。麻酔のリスクや術後のケア方法、費用など、獣医さんと十分に話し合った上で決めてください。

<予防法>
小型犬であるパピヨンの場合、先天的な要因を防ぐことができないため、膝関節への負担を可能な限り抑えなければなりません。
例えば、体重が増えればそれだけ膝に負担がかかるので、食事による体重管理は大切です。また、フローリングなどの滑りやすい床材だと、滑らないよう踏ん張った際膝に負担がかかるので、カーペットを敷くといいでしょう。この他、ジャンプや過度な運動をさせないなどの注意も必要です。
少しでも膝蓋骨脱臼が疑われる素振りを見せたら、早めにかかりつけの動物病院で診てもらってください。

パピヨンもなりやすい目の病気

目やにが多かったら眼瞼内反症の可能性が!

「眼瞼内反(がんけんないはん)」とは、逆さまつ毛のことで、眼瞼内反症はまつ毛が眼球に当たることで角膜が炎症を起こしてしまう病気です。

<症状>
まぶたが内側に巻き込まれることで、まつ毛が眼球に触れてしまい、角膜の表面を擦ってしまいます。まつ毛の刺激により不快感や痛み、かゆみが現れ、涙や目やにが出ることも。
悪化すると角膜が傷つくことで角膜炎や結膜炎が発症する病です。
症状が現れたまま放置していると、角膜が白く濁ったり黒く色素沈着が見られるよにうになったりして、内反症そのものを治療しても角膜炎や結膜炎が治り難くなります。

<原因>
主な原因は以下になります。
・先天性
・加齢性
・痙攣性

いずれが原因の場合も、まぶたの皮膚の過剰・たるみ、皮下の筋肉の筋力低下などで起こります。結膜炎の重症化や外傷などが原因で、まぶたが変形したり眼の回りの筋肉や神経が異常を起こしたりすることで、発症することもあります。

<治療法>
根本的な完治のためには、外科手術による瞼の矯正が必要です。
ただし、瞼の内反の程度が軽ければ、角膜や結膜を刺激しているまつ毛を抜いたり点眼薬を使用したりといった、内科的治療で改善が見込める場合もあります。

<予防法>
原因が原因なだけに、予防が困難な病気なので、産まれてから1歳になるまでの間に診察を受け、早期発見・治療が必要です。
また後天的な原因の場合は、パピヨンが頻繁に目を気にするような仕種を見せたら、早めに獣医師に診てもらってください。日常で定期的に目のケアをしてあげて、涙や目やにが多いようなら、疑うべきかもしれません。

老犬になったら気を付けたい「白内障」

パピヨン

白内障は、眼球内にあるレンズ「水晶体」がたんぱく質の編成により白く濁ることで、視力が低下する目の病気です。進行性で、内科的治療では治らず最終的に失明する恐れがあり、手術で水晶体を人工のレンズに取り換える必要があります。

<症状>
進行すると水晶体の濁りが濃くなり、視覚障害が現れます。
それに伴い壁や柱に頻繁にぶつかるようになったり、段差に躓いたりするようになるなど、視覚障害による行動の変化が見られるようになるでしょう。また、ちょっとした物音にも驚くようになるなど、音に対して敏感になることもあります。

<原因>
白内障には、大きく分けて若齢のうちに発症する「若年性白内障」と加齢とともに発症する「老年性白内障」があります。
ワンちゃんの白内障は、先天的な遺伝が原因となる「若年性白内障」が多いといわれており、生後~2歳頃までに症状が現れます。また、白内障以外の眼病や糖尿病など、ほかの病気がきっかけで併発することや、目の重度の外傷によって発症することもあります。
もう一つの「老年性白内障」は、読んで字のごとく加齢が原因の白内障で、概ね6歳以上の年齢の老犬に症状が現れます

<治療法>
初期段階であれば、点眼薬を使った内科的治療法で病気の進行を遅らせます。
しかし、内科的治療では根本的な治療にはなりません。そのため、いずれは外科手術が必要になるでしょう。
手術は、眼科の専門医によって行われ、白濁した水晶体を取り除き、人工の眼内レンズに置き換えることで視力を戻します。術後は点眼薬でケアしますが、この際ワンちゃんが目をこすらないようにカラーをつけて触れないように保護します。

<予防法>
白内障の予防に有効な方法は、現在まだ判明していません。そのため、定期的な健康診断による早期発見が大切です。
ご自宅では、ワンちゃんの目の色や行動異常など、日頃から愛犬とのスキンシップを兼ねて体の異常などをチェックするといいでしょう。

予防できない遺伝性の病気「進行性網膜萎縮」

進行性網膜萎縮症とは、網膜の異常により、少しずつ光を感知できなくなっていく病気です。遺伝により発症する先天的な病気で、最終的には失明にいたり、現状完治は見込めません。
様々な犬種で発症が確認されており、犬種により発症時期などが異なります。

<症状>
進行することで、徐々に視覚が衰えていきます。
初期段階では、夕方〜夜の時間帯に目が見えにくくなり、暗いところで壁や物にぶつかるようになります。
症状が進行すると、暗い場所を怖がったり物音に敏感になったりするとともに、行動が緩慢になることも。日中も目が見えなくなり、やがて失明に至ると、周囲の明るさに関わらず瞳孔が開きっぱなしになります。
また、病気が進行すると白内障を発症する場合があります。

<原因>
進行性網膜萎縮症は、先天的な遺伝性疾患が原因です。
そのため、予防できません。しかし、数ヶ月~数年という長い期間をかけて少しずつ進行する病気なので、最終的な失明にいたるまでにある程度環境を整えることができるでしょう。

<治療法>
進行性網膜萎縮に明確な治療法はなく、投薬やレーザー治療などで進行を遅らせることはできますが、最終的な失明は避けられません。
ただし、発症から失明までの期間は比較的長いので、進行性網膜委縮と診断されたら、来るべき日に備えて不安やストレスが少ない生活が送れるように生活環境を整えるといいでしょう。

<予防法>
遺伝的に進行性網膜萎縮の変異遺伝子を持っている場合、現代の医学で発症を予防することはできません。できるのは、進行を遅らせることだけです。

パピヨンがかかりやすい皮膚の病気

抜け毛多かったら病気のサイン?「アレルギー性皮膚炎」

人間も患うアレルギー性皮膚炎は、同様にワンちゃんもなりやすい病気です。
アレルギー性皮膚炎は、アレルギー体質のワンちゃんがアレルギー症状を引き起こす原因物質「アレルゲン」に触れることで、体内の免疫機構が過剰に反応するため生じます。
慢性的な病気で根治が難しいため、長い目で付き合っていく必要がある病気です。

<症状>
アレルギー物質が原因の皮膚炎ということで、炎症による痒みが主な症状です。
炎症が起こる主な部位は、耳や脇、股、足先、口や目の周りなどで、症状が進行すると皮膚に赤みや脱毛、小さな発疹が現れます。傷口から細菌が感染して、症状が悪化することがあるので注意が必要です。
食物アレルギーの場合、皮膚の症状以外にも、外耳炎や消化器症状を引き起こす場合があり、接触性アレルギーは、原因になるアレルゲンと接触した部分に炎症が現れます。

<原因>
アレルギー性皮膚炎の原因はアレルギー物質のアレルゲンですが、どんなアレルギーなのかによって原因物質が異なります。アレルゲンの種類は以下の通りです。

・吸引性
ハウスダストや花粉、カビなど。吸引することで発症します。
・食事性
牛乳や肉類など、主にタンパク質。摂取することで発症します。
・ノミ
ノミの唾液中にあるタンパク質。ワンちゃんの皮膚に寄生して吸血することで発症します。
・接触性
じゅうたんや食器など。対象に皮膚が触れることで発症します。

<治療法>
発症した場合、基本的に対処療法になります。
検査によりアレルギー物質を特定して、原因となるアレルゲンを除去するとともに、抗ヒスタミン剤や副腎皮質ホルモン剤、免疫抑制剤などを投与することで、痒みをコントロールしていきます。症状次第で、どちらか片方または併用することになります。
このほか、少量のアレルゲンを身体に入れ、少しずつ慣らしていく減感作療法という治療法もあります。ただし、この治療法は完治が期待できる反面、費用や治療期間がかかるので、治療には気長に付き合っていくことになるでしょう。

<予防法>
原因となるアレルゲンを遠ざけることで予防が可能です。
例えば、ノミがアレルゲンなら、ノミの駆虫剤を定期的に使用することで予防することができます。

まとめ

パピヨンは小型犬でありながら、遺伝病が少ない比較的健康な犬種といえます。それでも、
犬である以上特有の病気には注意が必要です。今回は、犬種問わず患いやすい病気の、「症状」「原因」「治療法」「予防法」をそれぞれ紹介してきました。
中には治療や予防が難しい病気はあります。
しかし、発症したらどんな症状が現れるのか、どんな点に注意すればいいのか。理解していれば有効な対策を講じることができるでしょう。

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