1.お手入れってそんなに重要?
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フレンチブルドッグは毛が短い短毛種で、お手入れがあまり必要ない犬種に見えますが、実は抜け毛が多く「ブラッシング」が欠かせません。ブラッシングを行うことによって、抜け毛を防ぐほか、汚れを除去し血行を良くする効果も期待できます。その他にも、「爪切り」、「耳掃除」、「シャンプー」などのお手入れも必要です。
お手入れを怠ってしまうと体や耳の中が不潔になってノミやダニなどの寄生虫が発生してしまいます。また、適切なお手入れでなければ病気や怪我にも発展してしまう可能性があるので、飼い主として愛犬のお手入れをしっかり行ってあげましょう。
今回は、各お手入れの重要性や頻度をお伝えしつつ、お手入れ方法をまとめて紹介します。
①ブラッシング
フレンチブルドッグは抜け毛が多い?
抜け毛が多いフレンチブルドッグですが、特に春先と冬にかけての換毛期と呼ばれる季節はほかの季節と比べて多く毛が抜けます。
どうして被毛がそんなにも抜けるのでしょうか?それはワンちゃんの被毛の構造に理由があります。
●ワンちゃんの被毛の構造
被毛の構造は犬種ごとによって「シングルコート」と「ダブルコート」の2種類に分けられます。ワンちゃんの被毛には「オーバーコート(上毛)」と「アンダーコート(下毛)」があり、オーバーコートは体を外からの刺激から守り、アンダーコートは体を寒さから守ります。オーバーコートのみが生えている犬種をシングルコートと呼び、オーバーコートとアンダーコート両方生えている犬種をダブルコートと呼びます。
フレンチブルドッグは「ダブルコート」なので、抜け毛が多くなるのです。寒さを防ぐアンダーコートは、寒い冬に備えて生え変わり、暖かい春先に冬で生えた多くのアンダーコートが抜け落ちます。
ブラッシングの必要性と頻度
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フレンチブルドッグは換毛期で被毛が生え変わります。抜け落ちたアンダーコート(死毛)をブラッシングで取り除かずに放っておくとオーバーコートにアンダーコートが埋もれ、通気性が悪くなり蒸れの原因にもなってしまいます。蒸れは細菌の繁殖や痒みを発生させ皮膚病にも発展してしまうので、ブラッシングを行い死毛を除去する必要があるのです。
また、ブラッシングは体の汚れの除去や血行促進、マッサージ効果も期待されます。フレンチブルドッグは長毛のシングルコートの犬種とは異なり毛玉などはできませんが、他犬種と比べ皮膚が弱い子が多いので、皮膚のケアのためにもブラッシングが必要です。
ブラッシングは基本的に毎日行うべきお手入れになります。1日5分ほど、お散歩の後に体の汚れを落とすついでにブラッシングを行うのもおすすめです。毎日習慣づけて行い、終わった後しっかりと褒めてあげれば、ブラッシングを嫌がることはないでしょう。
ブラッシングに必要な道具とやり方
ブラッシング道具にはさまざまな種類があり、犬種や用途によって使い分けます。フレンチブルドッグに使用するブラッシング道具は主に「ラバーブラシ」と「獣毛ブラシ」です。
●ラバーブラシ
シリコン製のブラシで、「死毛の除去」、「血行促進」、「マッサージ効果」の役割があり、短毛種でダブルコートの犬種向きです。たくさんの尖ったピンが付いているスリッカーブラシとは異なり、ブラシ部分がシリコンになるので扱いも簡単で、気持ちよさそうにブラッシングを受けるワンちゃんも多いです。
●獣毛ブラシ
豚毛、イノシシ毛、馬毛などの動物の毛を使ったブラシです。100%獣毛ではなく、ナイロンと混ぜた獣毛ブラシもあるので愛犬に合った獣毛ブラシを探してあげましょう。
獣毛ブラシは静電気が発生しにくい性質があるので「被毛に付いたホコリの除去」、「柔らかい被毛を維持する」効果があります。
また、毛が硬いイノシシ毛の獣毛ブラシは、アンダーコートを除去する役割もあるので、フレンチブルドッグをお迎えするのであれば揃えておきたいブラシです。
●ブラッシングのやり方
フレンチブルドッグのブラッシングは比較的簡単です。ラバーブラシも獣毛ブラシも毛並みに沿って優しくかけていきます。フレンチブルドッグの皮膚は垂れているので、全面をブラッシングできるように片手で皮膚を軽く抑えながらブラッシングするようにしましょう。
②爪切り
爪切りの必要性と頻度
人と同じようにワンちゃんの爪も放っておくと伸び続けるので、定期的に爪切りをする必要があります。伸びきってしまった爪は徐々に巻き爪になって肉球を傷つけてしまったり、歩きにくくなって物にひっかかりケガをしたりしてしまいます。
ワンちゃんの爪には血管が通っており、爪を切る際にこの血管を切ってしまうと、出血してしまいます。
爪切りの音や感触を嫌がる子も多いですが、爪を伸ばしていると血管も一緒に伸び一度に切れる長さが段々と短くなるので定期的に爪を切る必要があります。
爪切りの頻度は月に1~2回程度です。伸び具合は個体差があるので、足先を触る練習と共にどれくらい伸びているかチェックしましょう。どうしても飼い主自身でできない場合は無理せず、動物病院やトリマーに依頼するのも一つの手です。
爪切りに必要な道具とやり方
爪切りに必要な道具は、「ペット用の爪切り」、「爪やすり」、「止血剤」です。
●ペット用の爪切り
ペット用の爪切りは人間用と違った形をしており、犬・猫の爪に合った爪切りになっています。種類はギロチン式とニッパー式があり、フレンチブルドッグの場合は「ギロチン式」を使うのが一般的です。
●爪やすり
爪やすりは人のものと変わりはありませんが、ワンちゃんの爪は丸くなっているので、ワンちゃん用の爪やすりも湾曲した形になっています。役割も人の爪やすりと変わらず、切った後の爪をなめらかにするために使用します。
●止血剤
止血剤は、誤って血管を切ってしまったときに使う道具です。一般的に粉末状の止血剤が販売されています。使用する際は粉を適量指で取り、爪の出血した部分に押し付け止血をします。
【爪の切り方】
爪切りは直線になっている側に親指を乗せて、下のギロチンの稼働させる部分を他の指で持ちます。白い爪の場合は中に通っている血管が見えますのでそこを目安に切れますが、黒爪は血管が見えないので断面に白い血管が見えるなどを基準にして切っていきます。
黒爪の場合は、経験と慣れもありますので一度トリマーに爪切りを依頼して、どれくらい切れるのか確認してから飼い主自身で切っていくことをおすすめします。
爪は少しずつ角を削るように丸く切っていくと、やすりもかけやすいです。
また、ワンちゃんには「狼爪(ろうそう)」があります。狼爪は前足の内側に生えており、オオカミの名残とも言われています。もともとない子もいますし、引っかかって怪我をするので生まれてすぐ除去するブリーダーもいます。基本的には生えているのでこの爪も忘れずに切りましょう。
【爪やすりの仕方】
爪やすりは、爪を切った際に爪が丸くなるようにやすっていきます。独特な感触から爪切りより嫌がる子が多いです。一方向からやするのではなく角を削るように多方向からやすると丸くなりやすいです。
③耳掃除
耳掃除の必要性と頻度
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フレンチブルドッグの特徴でもある立ち耳のバッドイアーは通気性が良く、垂れ耳の犬種と比べて耳の病気にかかりにくいです。しかし、耳に汚れは溜まるので週に1~2回は耳掃除を行いましょう。フレンチブルドッグの耳は見やすいので、比較的チャレンジしやすいお手入れです。耳掃除は頻度の多いお手入れになりますので飼い主自身で行えるようにしておきましょう。
ただ、耳掃除はし過ぎてもよくありません。耳の中は柔らかい場所になりますので、刺激を与えすぎてしまうと逆に炎症を起こしてしまう場合があるのです。
また、耳掃除の際にいつもと違う色の耳垢や耳をいつも以上に掻くようであれば病気の可能性も疑い、早めに動物病院を受診しましょう。
耳掃除に必要な道具とやり方
耳掃除で準備するのは「イヤークリーナー(イヤーローション)」、「コットン」です。
イヤークリーナーは、液体の耳掃除液です。化学成分が入っていないものを選ぶと、より安全にケアすることができます。
コットンにイヤークリーナーを染み込ませ、耳介(見えている外耳手前のヒダ)を優しく拭きましょう。
なお、イヤークリーナーを直接耳に注いだり、綿棒で耳の奥を掃除したりする方法は耳の中を傷つけ、炎症を悪化させる場合があるのでおすすめできません。耳の奥が気になる場合は、動物病院で診てもらいましょう。
④シャンプー
シャンプーの必要性と頻度
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シャンプーは体の汚れを除去し綺麗にする役割だけでなく、ワンちゃん特有の気になるニオイの抑制、ノミ・ダニなどの寄生を防ぎ皮膚病予防にもなります。フレンチブルドッグは皮膚が弱い傾向があるので、シャンプーをしっかり行い、皮膚病を予防してあげましょう。
とはいえ、ワンちゃんには毎日のシャンプーは必要ありません。逆に毎日シャンプーをしてしまうと、ある程度必要な皮脂までシャンプーによって落としてしまい炎症や痒みを引き起こす場合があります。
そのため、シャンプーの頻度は月に1回~2回程度が目安だと言われています。
敏感肌や皮膚病を患っているフレンチブルドッグの場合は、獣医の指示でシャンプー療法を行う可能性があります。シャンプー療法とは薬用シャンプーを使い、場合によって週に1回、2週間に1回と普通のシャンプーより頻度が多くなります。そのため、薬用シャンプーでのシャンプーをすすめられたときは、獣医師の指示通りにシャンプーをしてあげてください。
シャンプーに必要な道具とやり方
シャンプーで準備するのは「シャンプー」、「リンス」、「タオル」、「シャワー」、「ドライヤー」です。補助的にあれば良いものは「ラバーブラシ」、「お風呂場の床に敷くバスマット」などになります。また、「薬用シャンプー」はリンスを使用しない物もあるのでしっかりと説明を聞いておきましょう。
ワンちゃん用のシャンプーはさまざまあります。肌が敏感の子や、アレルギーを持っている子は低刺激のシャンプーを選んであげましょう。使用した後に皮膚が赤くなったり、痒がったりした場合は使用したシャンプーを持ってすぐに動物病院を受診しましょう。
【シャンプーの手順】
1.ブラッシングし、毛のほつれや死毛を除去しておきます。
2.バスルームに連れて行き、シャワーの温度を手で確かめます。
※36℃~37℃程度が適温だと言われています。
3.急に体にシャワーをかけるのではなく、足元から優しくかけていきます。
※シャワーの勢いを弱くし、体にシャワーが当たるのを嫌がる子もいるので、体に密着させて濡らしていきます。
4.足からお尻、顔の方に向かって濡らしていきます。
5.シャンプーを手に取り泡立ててから、足・体を優しく洗っていきます。
※このときにラバーブラシを使うのもおすすめです。
6.一度シャワーで流した後、指で体をこすりキュッキュッとした感じがすればよく洗えている証拠です。ぬめりがあれば、その部分をもう一度洗いましょう。
※薬用シャンプーの場合は、ぬめりが取れないときもあります。
7.次に顔を洗っていきます。フレンチブルドッグは鼻の短い短頭種になるので、鼻に水が入らないよう特に注意をしながら濡らしていきます。
※シャワーのカランを使い、手を伝わせながら濡らしていく方法もあります。
8.顔も体同様優しく洗っていき、流します。
※フレンチブルドッグは顔にシワがあるので、シワの間もしっかりと洗いましょう。
9.シャンプーが終わったら、リンスを体になじませ流してシャンプーは終わりです。
【乾かす際の注意点】
フレンチブルドッグはダブルコートの犬種で、アンダーコートがとても乾きにくいです。乾かす際は、しっかりとタオルで体を拭いてからドライヤーで乾かしていきます。
また、ドライヤーを当てる際はドライヤーの温度を確認しながら、ワンちゃんとドライヤーの距離を20㎝~30㎝は離して当てます。乾かし終わったら、耳に水が入っているので耳の中の水分をコットンで拭いてあげてください。顔のシワにある水分もしっかりと拭き取りましょう。
まとめ
ワンちゃんを飼うには、さまざまなお手入れが必要です。フレンチブルドッグだからこそ気を付けなければならないお手入れもあります。フレンチブルドッグにはどのようなお手入れが必要なのか、理解した上で子犬の頃からケアしていくとスムーズに育てることができるでしょう。
また、ブリーダーから子犬を直接お迎えする場合は、お手入れ方法などもブリーダーに詳しく教えてもらえるので安心ですよ。
フレンチブルドッグの飼い方についてはこちらの記事で詳しくご説明しています。
初心者向けフレンチブルドッグの飼い方
著者/ブリーダーナビ編集部