犬は私たち人間よりもよく眠る動物です。
厚生労働省の調査によれば、日本人の約4割の睡眠時間は6時間未満※1。
それに対し、犬の平均睡眠時間は10〜11時間程度。人間より4〜5時間程度多く眠っている計算になります。
また一般的に成犬が必要とする睡眠時間は12〜15時間ほどと言われており、実に1日の半分以上は眠っていることになります。
犬にとって「寝ること」は健康な身体を養うためにもとても大切なことです。愛犬がゆっくり身体を休めるためにも、飼い主さんが率先して最適な寝床を提供してあげる必要があります。
ここでは犬が心地よく眠れる寝床の作り方と設置場所、そして季節に合わせた対応策について見ていきましょう。
※1.厚生労働省「令和2年度 健康実態調査結果の報告」より
寝る場所はどこが良い?
愛犬に安心して寝てもらうためにも、ゆっくりくつろげる場所に寝床を用意してあげたいもの。
では、どんな場所が犬にとって最適なのでしょうか。また逆にストレスを生じてしまう恐れのある場所はあるのでしょうか。
寝るのに最適な場所と適していない場所
犬にとって寝床はとても大切な場所です。特に音や気配に敏感な犬にはて、寝床がテレビの近くや人が出入りする場所にあるとストレスになってしまいます。
そのためなるべく人の動線から外れ、ドアや窓からも離れた場所に寝床を作るのが良いでしょう。さらに周囲(テリトリー)を見渡せる場所だと最適です。
また犬は本来暗くて狭い場所を好む動物ですので、ケージやクレートが寝る場所だと教えれば、そこが落ち着ける場所と認識し、快適な睡眠を取ることができるようになります。
では犬にとって、寝るのに適さない場所はどのようなところなのでしょうか。
テレビやトイレの横
水音やテレビの音が響き、ゆっくり寝ることができずストレスの原因になります。
直射日光が当たる窓辺
長時間日差しが当たる場所にいることで熱中症になる恐れがあります。
外が見える場所
窓から外が見えてしまうと、犬は本能的に警戒心を働かせてしまい、ゆっくり身体を休めることができません。
エアコンの風が直接当たる場所
体温調整が上手にできず、体調不良の原因になることもあります。
コードや配線が集まる場所
足などにコードが絡まってしまい、ケガをする恐れがあります。
これらの場所は犬にとって快適な場所とはいえません。
愛犬の寝床がこれらに当てはまる場合には、寝床の配置を見直しましょう。
飼い主と同じベッドや布団は注意が必要
大好きな愛犬と一緒に、同じベッドや布団で一緒に寝たいと思う飼い主さんも多いかもしれません。
海外ではペットと一緒に寝ることで、心身共に安らぎ安眠効果も期待できるという研究結果も出ています。※2
しかし犬と一緒に寝ることは、病気やケガといったリスクがあることをご存じでしょうか。
例えば犬の大きさにもよりますが、飼い主が寝がえりを打ったときに潰してしまう恐れがありますし、ベッドからの落下事故を引き起こす恐れがあります。
また寝てる間に犬の口や肛門が接触する恐れがありますし、飼い主がいないと眠れなくなるなどの分離不安を起こすなど、さまざまなリスクが伴います。
これらのリスクを飼い主自身で対処できないのであれば、一緒に寝るのは避けるべきといえるでしょう。
※2.参照:Mayo Clinic Proceedings Home『The Effect of Dogs on Human Sleep in the Home Sleep Environment』より
正しい寝床の作り方
愛犬に安心して寝てもらうためには、どのような寝床を提供するのが望ましいのでしょうか。
愛犬専用のベッドを与えてあげて
まずは愛犬がぐっすり眠れる場所を用意してあげましょう。できれば専用のベッドがあると望ましいです。
犬にとってベッドは寝る目的以外にも、くつろぎの場として利用できるという大きなメリットがあります。また安心して過ごせる場所があることで、犬の情緒も安定しやすくなるといわれています。
リラックスできるベッドを選ぼう
犬用のベッドは種類がとても豊富で、どれを選んだらよいか迷ってしまう方も多いかと思います。
おしゃれなベッドや可愛らしいベッドも良いのですが、まずは愛犬が安心して快適に過ごせるベッドを選んであげましょう。
例えば暑い季節は、通気性がよい素材のものや接触冷感生地のベッドに、寒い時期はもこもこしたボア生地などの保温性の高いベッドにするのがおすすめです。特に寒い時期は床からの冷えを感じにくくなるように、厚めのベッドを選んであげるとよいでしょう。
またベッドの形や硬さにも気を付けてあげたいところ。
シニアになると筋力が落ちたり、関節疾患を持つ子が増えたりするため、体圧分散ができる低反発タイプ(または高反発)がおすすめです。
体の負担を軽減するためにも、厚みがあるベッドを選び、乗り降りしやすいようにステップなどを作ってあげてくださいね。
トイレと寝る場所は別々に
犬は基本きれい好きといわれています。そのため、ケージ内に寝床とトイレが並べて置かれるのを好みません。
これも犬が巣穴で暮らしていた頃の習性なのですが、巣穴の中で排泄をしてしまうと虫や菌などが繁殖してしまい、衛生上よくないことを知っているからです。
部屋の広さにもよりますが、なるべく犬の寝床とトイレは離してあげるようにしてくださいね。
冷風や暖房の温風が直接当たらないように
私たち人間とは違い、犬はうまく体温調整をすることができません。また暑さや寒さに弱い犬種も多くいますので、犬がぐっすり眠るためには室内の温度調整はとても大切です。
しかし、エアコンの冷風や温風が直接体に当たると体温調整がうまくできなくなり、食欲不振や免疫力低下など、体調不良を引き起こす場合があります。
犬の体に直接風が当たらないように日頃から気を付けてあげてくださいね。
年齢、体格によって寝床を変えてあげて
犬は犬種によって小型、中型、大型と体の大きさが異なります。ベッドを選ぶときは愛犬の大きさに合わせてひと回り大きいサイズのものを選び、成長に合わせてサイズを変更するようにしましょう。
また私たち人間に枕の高さの好みがあるように、犬にも頭を高くして寝たい子や、あごを乗せて寝たい子がいます。フチのあるなしも犬のサイズや好みに合わせて用意できるとよいですね。
さらに犬は年を取ると寝ている時間が長くなったり、血行不良や床ずれを起こすリスクが高まります。体の一部分に体重がかからないよう、体にかかる圧を分散するベッドや、湿気がこもらない通気性のあるマットを選んであげてください。
高齢になるとトイレの失敗が増えてくることもあります。ベッドが汚れたままだと不衛生ですので、お手入れのしやすい洗えるベッドがおすすめです。
夏の寝床対策
気温と湿度を適切に
快適な睡眠を取るためには、適切な室温管理も重要なポイントです。
犬は体温調節が苦手なため、気温と湿度の高い場所にいると熱中症になる可能性があります。
部屋全体を適切な温度・湿度に保つだけでなく、ベッドの配置にも注意が必要。
日光の当たる場所やエアコンの冷風を浴びる場所は避けましょう。
また周囲が囲われていて安心感があるドーム型のベッドを好むワンちゃんも多いですが、夏場にドーム型のベッドを使用すると熱がこもりやすいため危険です。
ドーム内の換気ができるよう工夫するか、夏場はドーム型でないタイプのベッドに交換してしまうのがよいでしょう。
涼しくて快適な空間を作ってあげて
寝る時はもちろんのこと、お留守番させる時もエアコンをつけて室内を涼しく保ってあげるようにしましょう。
ダブルコートの犬種:23~26℃
あくまでも上記は目安ですので、愛犬の体調に合わせて調節をしてあげてください。またペット用のクールマットをベッドや寝床の一部に敷いてあげると、自分で調節できるのでおすすめです。
冬の寝床対策
冬場は保温性の高いものを
「♪犬は喜び庭かけまわり~猫はこたつで丸くなる~」という歌がありますが、犬だって冬は寒く感じます。
犬は基本的に暑さより寒さに強い動物ですが、子犬や高齢犬は体温調節がうまくできないため寒さ対策が必要です。
また温暖な地域が原産の犬種は寒さに耐えられる被毛を持ち合わせていませんし、犬種に関わらず個体によって寒さの耐性が全く異なります。
そのため冬場の犬の寝床には寒さ対策が必要です。
まずは寝床付近を冷たい風が通り抜けないようにしましょう。ケージやクレートの周りを板で囲んだり上に毛布をかける、置き場所を部屋の角にするなどがよいでしょう。
またベッドを床に直接置かずにマットを挟むなどし、保温性を高めてあげてくださいね。
ぬくぬくできる環境づくりが大切
冬場はできるだけあたたかい環境づくりが重要になってきます。
ダブルコートの犬種:19~23℃
暖房器具をつけて室内をあたためるのはもちろんのこと、ペット用のヒーターマットを敷き、寝床もポカポカにあたためてあげるようにしてください。
ただし全体を温めてしまうと暑いと感じたときに逃げ場がなくなってしまうので、敷かない場所も一部残すようにしましょう。
まとめ
犬は1日の大半を寝て過ごすので、少しでも快適な環境にしてあげたいですよね。
もしも犬用のベッドがあるのにソファや飼い主のベッドで寝ていたら…もしかしたらベッドが快適ではないのかもしれません。
犬用のベッドにはたくさんの種類がありますので、これを機に愛犬がくつろげるベッド探しや、落ち着いて眠れる環境づくりをしてあげてくださいね。
著者/ブリーダーナビ編集部