泥まみれになりながらの捜索活動
静岡県熱海市伊豆山で発生した大規模な土石流災害の現場では、5頭の災害救助犬が行方不明者の捜索に当たりました。
参加したのは、NPO法人日本捜索救助犬協会所属のコアくん、ニコちゃん、エムちゃん、バリーちゃん、エルザちゃん。4人のNPO会員と共に災害現場に足を踏み入れました。
災害救助犬コア、エム、バリー、任務を終え無事に帰宅しました。心身のケアをして次回の要請に備えます。昨日の捜索後、泥々の犬達に「洗っていって」と声をかけて水道を使わせてくださった市民の方、本当にありがとうございました。とても嬉しく助かりました。https://t.co/1YdxCJFhu9#災害救助犬 pic.twitter.com/8cH9h0eszc
— Rookie (@kainehenalu) July 15, 2021
危険がいっぱいの災害現場の中、瓦礫の中に人がいないか懸命に探す救助犬たち。今回の現場は実際足を踏み入れた時、土砂と大量の水、堆積物に阻まれ、特に過酷な現場だったそうです。
災害救助犬のコアくんとパートナーを組むハンドラーのRookieさんに、救助犬として活躍するコアくんついてお話しを伺いました。
―4頭のワンちゃん達とそれぞれペアを組んでの活動で大変だったことがあれば教えてください。
「腿の辺りまで埋まってしまうような、まるで底なし沼のような箇所もある現場は、進むのが本当に大変でした。
犬たちは人間より身軽ですが、それでも胸まで泥で埋まってしまうことも。土砂と濁流、泥と気温の高さで心配はありましたが、犬たちは意欲的に捜索を最後まで続けてくれました」
―今回コアくんは初めての実働にも関わらず、堂々と意欲的に捜索活動をしたそうですね。
「普段の訓練とは違う緊張感のある雰囲気、そして大勢の消防や県警の方々に囲まれながらの捜索活動でしたが、土砂に足を取られながらも、全く臆することなくやる気満々で捜索している姿に凄いなと思いました。
指示もいつもよりしっかり聞いてくれて、とても頑張ってくれました」
―コアくんは災害救助犬になってどれくらいなのでしょうか。
「JKCの災害救助犬認定を受けてから3年です。瓦礫訓練はたくさんしてきましたが、コロナの影響もありなかなか実働はありませんでした。もちろん、災害はない方がよいのですが。
訓練の時も捜索が好きなようで「早くやりたい!」「もっとやりたい!」といっているように感じます。生来のものなのかエアセント(浮遊するにおいをキャッチする能力)がとても上手で、見つけるまで諦めず集中して取り組むんですよ」
―市民の方が泥だらけのコアくんたちを見て「洗っていって」と声を掛けてくださったそうですね。
「犬たちは足先から胸、肩の高さまで泥まみれでした。その泥も悪臭が強く、犬たちの健康のためにも早く洗い流してあげたかったので、とても嬉しかったです。
コアは水が好きで、この日はとても暑かったので気持ち良さそうでしたよ。他の犬たちも嬉しそうにしていました」
―とても過酷な中、捜索活動をするのは心身共に疲労があるかと思います。コアくんを始め、救助犬たちの心身のケアはどのようにされているのでしょうか。
「今回は会に協力してくださった獣医師さんが捜索後に犬たちを診てくださいました。
コアの場合ですが、母犬や姪っ子たちと楽しい時間を過ごし、涼しい部屋でゆっくり休んでもらいました。またのんびりとお散歩をしたり、一緒に美味しいものを食べたりしました」
過酷な環境の中、捜索活動本当にお疲れ様です。Rookieさんを始め、コアくんたち災害救助犬がいるからこそ、多くの命が救われているのだと改めて感じます。
日々の訓練が現場に活きる
コアくんが所属するNPO法人日本捜索救助犬協会では1人でも多くの命を救うために、そしていつ起こるかわからない災害に備えて、日々ハンドラーとの服従・遺体臭捜索や集まっての全体訓練などを行っています。
その中の訓練の1つが瓦礫捜索訓練です。
コア瓦礫捜索訓練の様子https://t.co/1YdxCJFhu9#災害救助犬 pic.twitter.com/zO20eA37gE
— Rookie (@kainehenalu) July 21, 2021
―瓦礫捜索訓練は具体的にどのようなことをするのでしょうか。
「瓦礫の中にヘルパーが隠れていて、匂いを辿って探し出す訓練です。
1回5~20分ほど捜索したら、1時間以上休憩を取り、再び練習を行っています」
コアくん、機敏に動きながらかすかな匂いを辿って探していますね。
このような一つひとつの訓練の積み重ねがあるからこそ、過酷な現場でも集中力が途切れることなく、人命活動ができるのでしょう。
またRookieさんに災害救助犬の凄さとハンドラーとしての想いについてお伺いしました。
「救助犬の訓練は基本的に、飼い主とペアを組んでかくれんぼしている人を見つける、また犬たちがその能力を思う存分発揮できる楽しいゲームです。
犬たちは練習をとても楽しんでいるので『かわいそう』といわれると残念に思います。
また、一緒に捜索していると犬の能力の高さに驚き敬服しますね。私たちハンドラーにとって犬は大事なパートナーでもあります。
現在、災害が起こってから災害救助犬が現場に入れるまでにはまだ時間がかかります。安全面の確保などいろいろあるので致し方ありませんが、犬たちの高い能力をもっと知ってもらえたら嬉しいです。そして私たちもさらに練習と経験を積んでお役に立てたらと思います。
民間の災害救助犬団体は行政からの支援はなく、皆さまからのご支援で運営されていますので、今後とも応援の程、何卒宜しくお願いします」
日本捜索救助犬協会は、国や地方自治体からの支援は一切なく、活動資金のほとんどが会費と自己負担によってまかなわれているそうです。
Rookieさんたちの活動に少しでも、興味・関心を持たれた方がいらっしゃいましたら、ぜひご支援とご協力のほど宜しくお願いします。
お休みの日はのんびりお散歩タイム
訓練や救助活動の要請がない日は、Rookieさんとのんびりお散歩タイムを満喫するコアくん。
毎日、ごきげんっ! pic.twitter.com/07hAkcxnIC
— Rookie (@kainehenalu) June 25, 2021
普段は甘えん坊で遊ぶことが大好きなんだそう。この笑顔を見ると、心が和みますね。
コアくん、いつも私たちのために、一所懸命動いてくれて本当にありがとう。
何もない日は思いっきりRookieさんに甘えて、たくさんの素敵な思い出を作ってくださいね。
名前:コア
犬種:ホワイトスイスシェパード
性別:男の子
年齢:6歳(2015年6月15日生)
性格:甘ったれ、元気いっぱい
【名前の由来】
ハワイ語の「KOA」から。勇者、戦士という意味を持つ。
著者/ブリーダーナビ編集部