犬の口腔内環境を衛生的に保つために、毎日の歯磨き習慣がとても大切だということは最近では常識となりました。
とはいえ実際のところ、ワンちゃんはどのくらいの頻度で歯磨きをしているのでしょうか?ブリーダーナビ公式Instagramでアンケートを実施しました。
愛犬の歯磨き、どのくらいの頻度でやってる?
(ブリーダーナビ公式Instagramでのアンケート 2021年8月5日実施 回答数72)
『毎日』歯磨きをしている方が最も多く、全体の36%となりました!毎日の習慣にされているとは、飼い主さんもワンちゃんも素晴らしいですね♪
そして次に多かったのが22%で『歯磨きしていない』。歯磨きは嫌がるワンちゃんも多く、チャレンジしてもへこたれてしまったり、そもそもお口を触れないなんてこともあるかもしれません。
嫌がる犬に対し、どのようにして歯を磨けばよいのでしょうか。ここでは楽しく歯磨き習慣を始めるための6つのステップをご紹介します。
なぜ犬に歯磨きが必要なの?
犬も私たち人と同じように、歯垢が溜まります。そしてその歯垢をそのままにしていると歯石となり、歯周病になってしまいます。
歯周病が悪化すると細菌の感染による炎症が進行し、さらに重大な疾患に発展してしまう恐れがあります。最悪の場合口に穴が開いたり、運動障害を引き起こしたり、病状の進行状況によっては死に至る危険性もあります。
現在3歳以上の成犬の約80%が歯周病予備軍、もしくは歯周病を患っているといわれています。
いつまでも健康で長生きしてもらうためにも、愛犬の口腔内環境を飼い主さんが率先してケアしていかなくてはいけません。
では、どのようにして歯磨きにを慣れさせていけばよいのでしょうか。
歯磨きに慣れてもらうポイントとは?
犬の歯磨きはとても大切です。しかしいきなり犬のお口に歯ブラシを入れてしまうと「歯磨きは嫌なもの」「恐いもの」と認識してしまいます。
まずは、口元に触られることから慣れさせていき、褒めたりご褒美のおやつをあげたりして「歯磨きは楽しいもの」と思えるようにしていきましょう。
ここでは、歯磨きを始める前のステップ1~3をご紹介します。
1.膝の上に座らせる「仰向け抱っこ」に慣れさせよう!
犬の歯磨きを行う場合、体勢がとても重要です。無理な体勢で歯磨きをしようとすると、犬にも負担がかかり嫌がってしまうからです。
そのためまずは犬がリラックスでき、飼い主さんも愛犬の顔を覗き込みやすくなる、膝の上での仰向け抱っこをできるようにしましょう。
人と犬の体の中心線が合うようにし、脇の下から手を通して胸の前で組んでください。この時、体の自然なカーブに沿って頭からしっぽの付け根まで飼い主さんの体に密着するように、優しく包み込んであげてしてください。
上手にできたら「偉いねぇ」とご褒美のおやつをあげてください。これを毎日続け、慣れてきたらいよいよお口に触れる練習を始めていきます。
体の大きな犬の場合、仰向け抱っこが難しい場合があります。その場合、飼い主さんがあぐらをかくような姿勢を取り、そのあぐらの真ん中に愛犬を座らせるようにしましょう。
2.お口の中を触る練習をしよう!
まずは、口元のタッチ練習から始めていきましょう。
口元に触れたら「よくできました」と愛犬の大好きなおやつをあげ、楽しませながら徐々に口元に触れる時間を伸ばしてください。
口元に触れても抵抗がなくなってきたら、口唇をめくり、歯と歯茎に触れていきましょう。その際、口を閉じたままでも構いませんので、タッチができたらすぐに褒めておやつをあげてくださいね。
さらに慣れてきたら、歯茎に沿って奥歯の方に指を入れて行きましょう。回数を重ねるごとに触れる時間を増やしていき、できたらその都度褒めておやつをあげましょう。
3.歯磨きシートを使って磨いてみよう!
口の中に指を入れても抵抗がなくなってきたら、次は歯磨きシートを使って歯磨きの練習をしていきます。
もしご自宅に歯磨きシートがない場合は、濡らしたガーゼやコットンなどでも構いません。
まず歯磨きシートをつけた指で、優しく犬の歯や歯茎をタッチしていき、1本ずつくるくると磨いていきます。触りやすい前歯や犬歯から始めていき、少しずつ奥歯まで磨いていきましょう。
その際、犬が突然動きださないように、もう一方の手で支えながら行っていきましょう。また、犬が嫌がったらすぐに歯磨きをストップしてください。
これらを続けていく内に、歯を磨くことへの抵抗がなくなりますので、歯ブラシに移行する際もスムーズにいきますよ。
楽しく歯磨き♪犬との歯磨き手順を解説
口に触っても抵抗がなくなってきたら、いよいよ歯ブラシで歯磨きをしていきます。
まずは犬のお口サイズに合った犬用の歯ブラシを選びましょう。小型犬の場合はスモールサイズ、中型犬の場合はミディアムサイズ、大型犬の場合はラージサイズと、それぞれ異なりますのでご注意ください。
また、決して人用の硬い歯ブラシは使わないようにしましょう。歯磨き嫌いの原因にもなります。
ここでは、犬の歯磨き手順ステップ4~6をご紹介します。
4.歯ブラシは鉛筆持ちで
歯ブラシは鉛筆を持つようにして、軽く握りましょう。鉛筆持ちは余計な力が入らず、細かいところまで磨けるのでおすすめです。
また力加減に問題はないか、歯を磨く前に自身の手の甲などに歯ブラシを当て、力加減を確認するようにしましょう。
5.角度は45度を心掛けて
犬用の歯磨き粉や歯磨きジェルなども市販されています。少量の歯磨きを歯ブラシに付けたら、少し舐めさせて犬を安心させてださい。おいしい香りがついているので喜ぶワンちゃんも多いですよ。
歯ブラシは歯と歯茎の間に45度の角度で当てます。横に少しずつ動かし、毛先を優しく小刻みに揺らすようにしながら1本ずつ磨いていきましょう
この時、無言になると犬は不安になってしまいますので、常に声を掛け褒めてあげながら磨いてあげてくださいね。
上の歯は、口を閉じていても磨くことができるので無理に開けなくても大丈夫です。また慣れるまでは、歯の裏側まで磨く必要はありません。無理せず徐々に慣らしていきましょう。
6.上手に磨けたらご褒美のおやつをあげよう
犬の歯磨きは毎日行おう!
犬の理想的な歯磨きの頻度は1日1回、少なくとも2日に1回のペースとされています。
その理由は、犬の歯垢は2日で歯石になってしまうからです。歯石になってしまうと、歯磨きをしても簡単に落とすことができません。そのため、歯石化する前に歯垢を落とすようにすることが重要です。
犬の歯磨きは、最初から完璧にはできません。ワンちゃんの体調や機嫌などを伺いながら、まずはできる範囲からゆっくり焦らず行っていきましょうね。
便利な犬のデンタルケアグッズを教えて
近年「犬も歯を磨く時代」ということもあり、多くのデンタルケアグッズが販売されています。
1番は歯ブラシで歯を磨くことがよいのですが「歯ブラシが苦手」という犬には、こんなデンタルグッズを使用してみてはいかがでしょうか。
指サック型の歯ブラシ
「硬い歯ブラシはどうしても苦手…」そんな犬には、指サック型の歯ブラシを使ってみてください。
指にはめて使う歯ブラシなのですが、歯ブラシの柄の部分がやわらかいので指にフィットしやすく、小さな口の奥歯にも届きやすい構造になっています。
「まだ歯ブラシは難しい」という犬にも使いやすいので、歯ブラシデビューをする前に使用してみるとよいですよ。
歯磨きガム
「なるべく愛犬にはストレスをかけたくない」という方には、歯磨きガムがおすすめ。ストレスを解消しながら、美味しくお口の中もケアができる一石二鳥の商品です。
少し固めで作られているものが多いため、歯磨きガムを噛むことで歯に着いた歯石を落としたり、口臭を軽減したりする効果が期待できます。
ただし、歯磨きガムだけでお口の汚れが全て落としきれるわけではありません。あくまでも『歯ブラシを嫌がる犬が受け入れやすいお口ケア』として役立つアイテムの1つといえるでしょう。
歯磨きシート
歯ブラシに慣れさせる前に使用することが多い「歯磨きシート」。歯を磨くことになれていない犬にとって大変おすすめです。
また直接指で歯の感触を確かめながら磨くことができ、細かい箇所の汚れや歯石が落としやすくなります。
またなによりも、犬に大きなストレスを与えないところが大きなメリットになります。
ウェットタイプのドッグフードを食べている犬は、洗浄効果が高いものを選ぶとGOOD!ただしシニア犬の場合は、歯や歯茎が弱っているので、やわらかいタイプのシートを選んであげるとよいですよ。
歯磨きスプレー
植物由来の成分を配合した犬用の歯磨きスプレーが多く販売されています。
犬のお口にシュッと吹きかけるだけで歯周病などの原因から守り、口腔環境の改善に期待できます。
色々な味のスプレーが販売されていますので、愛犬の好きな味のスプレーを探してみるとよいかもしれません。
また飲み水に混ぜて歯の汚れを落とす液体歯磨きなどもあります。スプレータイプが苦手な犬はこちらを試してみてはいかがでしょうか。
サプリメント
手軽にデンタルケアができるとして、お口のケアサプリメントがあります。
これは毎日食べるドッグフードの上にふりかけたり、混ぜたりするだけで口臭や歯石対策をすることができますし、健康維持におすすめです。
ただしサプリメントはあくまでも医薬品ではなく、栄養補助食品です。これで歯磨きをしなくてよいわけではありませんので、ご注意くださいね。
デンタルケア用のおもちゃ
楽しく遊びながらケアができるのが、デンタルケア用のおもちゃ。
ボールタイプや、引っ張りっこしながら遊べるロープタイプのもの、ぬいぐるみタイプや鹿の角まで、様々な商品が多数販売されています。
これらの商品には、歯の表面の汚れを拭き取る素材が使用されています。ただし遊びに夢中でちぎれたり壊れた際に出た欠片を誤飲しないよう、強度の高いものを選んであげてくださいね。
どうしても歯磨きを嫌がる…そんな犬には?
おやつ握り磨きを試してみよう!
なかなか歯を磨かせてくれない犬には、シートを巻いた手に大好きなおやつを持ち、チラッと見せながら「待て」の合図をし、やさしく声をかけながら歯を磨いてみましょう。
そして上手にできたら、大げさに褒めて手の中にあるおやつをあげてください。
そうすればワンちゃんも「おやつがもらえる」と認識し、歯を磨かせてくれるかもしれませんよ。
歯磨きガムや歯磨きスプレーを代用
前述でもお伝えした「歯磨きガム」「歯磨きスプレー」は、手軽に歯磨きができるアイテムです。
なかなか歯ブラシや歯磨きシートで磨かせてくれない場合は、こちらを代用してみると良いでしょう。
ただし犬種や犬の大きさによって、歯磨きガムは適切な形や大きさが異なります。顎の強い犬種の場合、丸飲みしてしまう恐れがありますので、きちんとサイズの合ったものを与えるようにしてください。
また素材や成分によってはアレルギー症状が出る場合もありますので、アレルギーを持つ犬がいるご家庭は注意するようにしましょう。
かかりつけの動物病院に行く
どうしても歯磨きを嫌がる場合は、すでに虫歯があったり、口の中をケガしていたりする可能性があります。もしかしたら歯槽膿漏になっていて歯肉が腫れているかもしれません。
そのままにしていると悪化してしまいますので、早めに動物病院へ行くようにしてください。
また私たち人間に定期的な歯の検診が推奨されているように、犬も定期的に動物病院で歯の状態をチェックしてもらうように心掛けましょう。
おわりに
犬は1歳以上になると歯磨きを嫌がる傾向にあるそうです。なるべく生後6ヶ月以内に始めると早く慣れてくれますよ。
もちろん1歳を過ぎても、少しずつ慣れさせていきながら歯磨きをしていきましょうね。
著者/ブリーダーナビ編集部