ワンちゃんを飼うのであれば、しつけを行うのは飼い主の義務といえるでしょう。
大型犬であれ小型犬であれ、しつけの大切さや大変さは同じです。しかし、シベリアンハスキーのような大型犬は、成犬になれば体も大きくなり力も強くなるので、しつけができていない場合の被害は小型犬の比ではありません。
本記事では、シベリアンハスキーを飼ううえで覚えさせたいしつけの種類や、そのしつけ方を解説していきます。
目次
シベリアンハスキーにしつけが必要な理由
小型犬でも大型犬でも、飼い犬として生活する以上、どんなワンちゃんであってもしつけは必要不可欠です。
大型犬の場合、特に体が大きく力が強いので、小型犬では許されがちな「飛びつく」「吠える」「引っ張る」「噛む」といった行動も、場合によっては大問題に発展することもあります。
大型犬のしつけは、小型犬と比べて周りの人を守るという意味合いが強いということを理解しましょう。
シベリアンハスキーのしつけは大変なの?
ワンちゃんの体の大きさは、しつけのしやすさと直接の関係はありません。
もちろん、身体の大きさや力の強さを考えると、大型犬のしつけは大変です。しかし、大型犬であれ小型犬であれ、教えるべき内容やしつけの仕方が変わるわけではありません。
しつけの覚えやすさも、個体差はあっても大型犬と小型犬の差はないので、大型犬のシベリアンハスキーであっても、しつけが特別大変ということはないでしょう。
しつけはいつから始めればいい?
しつけを始めるのは、早ければ早いほど良いとされていますが、それは大型犬のシベリアンハスキーであっても同じです。特別な理由がなければ、家にお迎えしたその日から始めていきましょう。
成長して力が強くなり、飼い主が抑えられなくなる前に、できるだけ多くの物事を教えてあげてください。
子犬期のしつけで特に重要な「社会化期」
犬の生後3週~16週は、【社会化期】と呼ばれる特別な時期になります。
社会化期は、まだ恐怖心が芽生えておらず、子犬が好奇心の赴くままあらゆる物事を経験し吸収することができる、ワンちゃんの一生で最も重要なしつけ時期です。
この時期にどれだけの経験をできたかで、その後の性格形成に大きく影響を及ぼします。
法律の定めで、ワンちゃんを家に向けることができるのは生後8週頃になるので、社会化期を一緒に過ごせるのはわずか4週間程度しかありません。
この短い社会化期のしつけを少しでも早く始めるために、子犬を迎えることが決まったら準備を整えて、家に来てすぐしつけを始められるようにしておきましょう。
成犬になったらしつけは難しい?
一般的に、しつけは子犬の頃にすることですが、だからといって成犬にしつけができないわけではありません。
子犬の方が成犬よりもしつけしやすいのは事実ですが、その理由は上述した「社会化期あるから」「何も知らない真っ新な状態であるから」の2つです。そのため、子犬はしつけがしやすく、この2つにあてはまらない成犬は、しつけに時間がかかってしまいます。
特に大型犬の場合は体が大きく力が強いので、制御が難しくなる分小型犬より難しくなることを理解しておきましょう。
しつけるうえでのポイントは?
しつけというと、上から強制的に覚えさせるようなイメージを持つ方もいるかもしれません。しかし一緒に暮らす家族として、大切なのは互いの関係性の構築です。
ここでは、しつけを行う際に理解しておきたい、心掛けなどのポイントを紹介します。
叱るよりも褒めることが大切
愛犬が思う通りに動いてくれないと、ついイライラしてしまうものです。だからとって、感情に任せて大声で怒鳴ったり手を上げたりするのは絶対に止めましょう。しつけが失敗する原因にはなっても、上手にいくようなことは絶対にありません。
人間の言葉を理解できないワンちゃんは、何を叱られているのか理解できず、ただ委縮してしまいます。
褒めることをしつけの基本にして、上手にできたらご褒美におやつを上げたりするのも良いでしょう。しっかり褒めてあげられれば、ワンちゃんは積極的に飼い主の期待に応えようとしてくれます。
褒めるときはオーバーリアクションくらい思い切り褒めてあげてください。
互いの信頼関係を築く
ワンちゃんとは、一方的に従わせる主従や上下といった関係ではなく、信頼関係を築いてしつけをしていきましょう。十分な信頼関係を築くことができれば、「言われたことに従う」ではなく、自主的に行動してくれるようなってくれます。
散歩やご飯の時間だけの限定的なコミュニケーションではなく、普段から一緒にいる時間を増やすことで、愛犬の考えや行動の意味が理解できるようになるでしょう。
しつけの時は厳しく、それ以外の時は優しく、メリハリをつけて過ごすことが大切です。
運動不足にさせないことが重要
シベリアンハスキーは、元々ソリ犬として活動していたこともあり、運動欲が旺盛な犬種です。1日に必要な運動量も豊富なので、毎日散歩は欠かさず行うようにしましょう。
運動不足になってしまうと、肥満のリスクが高まるだけでなくストレスを感じてしまうので、心身ともに健康によくありません。
愛犬を運動不足にさせないために、毎日の散歩だけではなく、月に1回程度はドッグランや広い公園など、思い切り走り回れる環境で遊ばせてあげましょう。
しつけ①:トイレトレーニング
トイレトレーニングは、ワンちゃんのしつけの中でも最初に覚えさせることになるしつけです。難しいしつけの1つともいわれています。
ここでは、そんなトイレトレーニングを失敗しないための手順や、用意しておきたい物を紹介します。
トイレトレーニングに必要なもの
- ペットシーツ
- トイレトレー
- クレート
トイレトレーニングのポイント
トイレトレーニングで心がけることは、以下の2つだけです。
- トイレで排泄させる
- トイレ以外で排泄させない
これを繰り返すことで、ワンちゃんはトイレを覚えていきます。
一見すると簡単そうに思えますが、同じことを地道に継続していくのは意外と難しいもの。
以下に、成功させるためのポイントを紹介します。
環境づくり
犬用のトイレは、トレイとペットシーツを組み合わせた物ですが。最初は成功の確率を上げるため、サークル全体にペットシーツを敷くようにしましょう。
また、毛布など柔らかい物を置くとそこをトイレと勘違いしてしまうので、トイレを覚えるまでは置かないようにしてください。
トイレトレーニングの手順
覚えるまで飼い主がトイレまで誘導してあげる必要がありますが、練習を繰り返せば放っておいても自分でトイレにいくようになります。
排泄を記録する
生まれて間もな頃は30分~1時間、そこから少し成長すると2~4時間の間隔でおしっこをします。基本的に排泄のペースは毎日ある程度一定なので、記録を残しておけばタイミングを把握しやすいでしょう。
特に、寝起きや食後、遊んでいる途中などはトイレに行きやすいタイミングです。また、地面の匂いを嗅いだり、その場でクルクル回ったりし始めたらトイレのサインかもしれません。
しつけ②:吠え癖・遠吠え
ワンちゃんは吠える動物です。人間が声でコミュニケーションを取るように、ワンちゃんの遠吠えはコミュニケーションの1種といわれています。そのため吠えることを完全に止めさえることはとても難しいといえるでしょう。
吠える・遠吠えの原因は?
ワンちゃんが吠える理由はさまざまです。そのため、一概に「これをすれば直る」というしつけはありません。
吠え癖を止めさせたいのであれば、まずは愛犬がなぜ吠えているのか、その理由を知ることから始めましょう。それを理解したうえで、原因ごとの対処をするようにしてください。
吠え癖は、主に以下の原因が考えられます。
- 要求
- 警戒
- 遠吠え、夜泣き
- 寂しい
ここからは、それぞれの原因ごとの対処法を確認していきましょう。
要求吠えをする際のしつけ方
例えば「ご飯を食べたい」「散歩に行きたい」「遊んでほしい」といった、何らかの要求のために吠えることがあります。
こうした要求吠えは要求を叶えてあげることで止みますが、これでは「吠えれば要求が通る」と認識してしまい、以降何か要求がある度に吠えるようになってしまうでしょう。そのため、要求に応えてはいけません。
吠えている間は原則無視して、相手にしないようにしましょう。そして吠えるのを止めたら褒めてあげてください。これで「吠えても要求は通らない」「吠えなければ良いことがある」と認識するようになってくれます。
警戒吠えのしつけ方
ワンちゃんは、怯えや恐怖から何かを警戒している時に吠えることも多いです。対象になるのは、見知らぬ人や動物、散歩中の車や自転車。さらにはインターフォンなどの音だったりする場合もあります。
この時、抱きかかえてなだめてあげればすぐ吠えるのを止めてくれる場合もありますが、これを褒められたものと勘違いして、以降も同じ状況で吠えるようになることも。
警戒して吠えている場合は、興奮して攻撃性が吠える行動として表れている状況なので、まずは落ち着かせる必要があります。
そのうえで、散歩中特定の場所で警戒するようであれば、コースを変えたりその場から離れたりすると良いでしょう。
また、家の中であれば、クレートの中など落ち着ける場所に連れて行ってあげれば、吠えるのを止めてくれます。
遠吠え、夜鳴きのしつけ方
遠吠えは、犬のルーツである狼もコミュニケーションとして用いられる行為です。
近所の犬の鳴き声に呼応して吠えたり、救急車のサイレン音に合わせて吠えるなど、ワンちゃんの鳴き声以外にも似た音に反応して吠えることがあります。一方、ワンちゃんの夜鳴きは、飼い主への甘えや病気のほか、認知症が原因となる行為です。
対応としては基本的に相手をせず、吠えるのを止めたら褒めてあげると良いでしょう。
遠吠えや夜鳴きは本能的な行為なのでコントロールするのは難しいため、名前を呼んだりおやつ・おもちゃで意識が向いている物を変えたりすることができれば、止めさせることができます。
それ以外の病気などが原因の場合は、その原因を取り除くことが先決です。
飼い主が不在時に吠えるときのしつけ方
留守番をはじめ、飼い主がいなくなると吠える場合は、まずひとりで過ごす時間に慣れてもらう必要があります。
最初は数秒程度の短い時間でもよいので、愛犬の前から姿を消してみましょう。それで吠えずに済んだら、少しずついなくなる時間を長くしていってください。
また、自宅内で落ち着いて過ごせる場所として、クレートトレーニングをするのも有効です。
しつけ③:噛み癖
ワンちゃんは口を器用に使いますが、その使い方の1つに「噛む」という行為があります。
これは本能的なことなので、何のしつけもしなければ、どんな物にも噛みついてしまうでしょう。
子犬の甘噛み程度であれば大したことはありませんが、シベリアンハスキーのような大型犬の成犬ともなれば力は相当なもの。トラブルを防ぐために、しっかりとしつけて噛み癖をつけないようにする必要があります。
噛む原因は?
ワンちゃんは、物を口に咥えて運んだりするので、特にしつけができていない限り当たり前のように物に噛みつきます。
ワンちゃんにとって噛むことは特別な行為ではなく、何のしつけもしなければ、噛みつくことに疑問を抱くこともなく自然と噛むようになるでしょう。
噛み癖のしつけ方
噛み癖を直すには、甘噛みの頃からしつけておく必要があります。
子犬が甘噛みする理由はほとんどが遊びの延長上です。そのため、過剰に反応するとその反応を喜んで、逆にエスカレートさせることになってしまいかねません。効果的なのは、甘噛みされても反応せず、静かに落ち着いた声で注意するに留めましょう。それで口を離したら、その瞬間にほめてご褒美を与えてください。
また、いくらしっかりしつけができたとしても、完全に噛むことを止めさせるのは難しいと思います。
そのため、噛みつきたいという本能的な欲求を満たしてあげるためにも、噛むおもちゃを与えたうえで、噛みついても良い物と悪い物を覚えさせるしつけがおすすめです。
しつけ④:留守番
ワンちゃんを飼うのであれば、多かれ少なかれ、どんなご家庭でも留守番させる場面もあるでしょう。
犬は群で暮らす動物なので、ひとりで過ごす時間に慣れていないと、寂しさからストレスを溜めてしまいます。
また、見守る飼い主がいないと、どんなことをしでかすのか分かったものではありません。
近隣の迷惑を考えて、何よりも愛犬の安全を考えると、留守番のしつけはしておきましょう。
安全に留守番してもらうための環境づくり
一人暮らしのご家庭など、愛犬をひとりにする時間が長くなってしまう場合、留守番のしつけは重要度が高くなります。
上手にお留守番してもらうために、ひとりで過ごす環境を整えてあげましょう。
そのうえで、最も重要なのは愛犬の安心、安全です。
お留守番でひとりにさせている時間は、何かあっても飼い主が助けることはできません。そのため、例えば誤飲して危険な物や触れてケガをする危険がある物は、隠したり届かない場所にしまうなどしてください。
夏場や冬場など、気温が極端に厳しい時期は、室温の調整も欠かせません。
シベリアンハスキーは寒さには強いものの暑さには弱いので、特に夏場はエアコンは点けっぱなしにして快適な室温をキープしてください。
留守にする時間の長さにもよりますが、飲み水や食べ物の用意も忘れてはいけません。
このほか、おもちゃも用意してあげればひとりの時間を遊んで過ごすことができるので、お気に入りの物を置いておくとよいでしょう。
留守番のトレーニング
大人しくお留守番をしてもらうためにも、ひとりでいる間落ち着いて過ごしてもらうためにも、しつけは欠かせません。
まずは、ひとりでいることに慣れてもらう必要があります。
最初は短時間でも良いので、愛犬の前から消えて、吠えたりせず大人しくできたらおやつなどご褒美を与えて褒めてあげましょう。少しずつ時間を伸ばしていき、ひとりで過ごす時間が特別ではないと認識させてください。
また、留守番の間落ち着いて過ごす場所を与えるために、クレートトレーニングも必要です。ワンちゃんは1日の大半を寝て過ごすので、これができるとできないとではかなり違うでしょう。
しつけ⑤:呼び戻し・制止
呼び戻し・制止のしつけとは、「おいで」「おすわり」「まて」「ふせ」といった、指示により特定の行動をさせるためのしつけです。
これができれば、どんな状況であっても愛犬を守ることができるようになるので、万が一に備えて早いうちに覚えさせるようにしましょう。
「おいで」のしつけ方
まずは室内など、集中できる環境でできるようになりましょう。
近くで目を合わせて「おいで」と呼びかけ、少しでも近くに来てくれたらおやつなどご褒美を与えて褒めてあげてください。
慣れてきたら少しずつ距離を広げていき、部屋の中で問題なくできるようになったら散歩中など、外でもできるようにしていきます。
ポイントは、「近寄ってきたらすぐに褒める」です。
褒めるタイミングがズレると、ワンちゃんは何を褒められたのか分からず、勘違いしてしまう恐れがあるので、褒めるのは「その瞬間」にしましょう。
「おすわり」のしつけ方
まずは、おすわりの姿勢を覚えさせます。
飼い主が腰を下ろして、愛犬と目線の高さを合わせてください。そして、指でフードを摘まんでワンちゃんに舐めさせながら「おすわり」と言っておすわりをさせましょう。
おすわりの姿勢が取れたら、その瞬間におやつをたべさせてください。
「おすわり」の指示だけでできるようになったら、少し時間をあけてからおやつをあげましょう。これで、「おすわり」の姿勢をきちんとキープできるようになります。
ジェスチャーも交えてやれば、他のしつけと同様、ジェスチャーだけでも「おすわり」ができるようになるでしょう。
最終的に、どんな状態でもできるように、うるさい場所で試したり離れた位置で指示したりすることも練習してください。
「まて」のしつけ方
まずはおすわりをさせ、おやつを見せて「まて」などコマンドを言ってください。コマンドは毎回同じ言葉で、はっきりとわかりやすく指示を出しましょう。
この時、コマンドと一緒に手の平を見せるなどジェスチャーを交えてやるとなお良いです。
最初は一瞬でも良いので、繰り返すごとに少しずつ時間も延ばしていきましょう。
十分な時間待つことができるようになったら、今度は1歩ずつ距離を取り、離れてもできるようにしていきます。前後左右あらゆる方向でできるように、おやつは必ず元の位置に戻ってからあげてください。
「ふせ」のしつけ方
まずは「ふせ」のジェスチャーを覚えさせます。
ワンちゃんにおすわりをさせ、おやつを持って鼻先に近付けにおいを嗅がせましょう。手に持ったおやつを舐めさせながら床に向けて移動させ、「ふせ」の姿勢を取らせます。
床にお腹をつけたら褒めて手に持っていたおやつをあげましょう。飛びついたり、前足で右手を引っかいたりしてきても、動かずに待ってください。
ここまでを1セットにして、1回3セット以上。10回連続でで成功したら次の段階に進みます。
ジェスチャーを覚えたら、次は「ふせ」のコマンドを教えます。
愛犬の正面に座り、「ふせ」と言ってちょっと間を開けてからジェスチャーで「ふせ」をさせてください。できたら褒めておやつを上げましょう。
繰り返せば声のコマンドでもジェスチャーでも、どちらでもふせができるようになります。
しつけ⑥:散歩
シベリアンハスキーは大型犬だけあって、散歩の時間・距離は小型犬よりも長くなります。
1日に必要な運動量はとても豊富で、成犬のシベリアンハスキーの場合、1回1時間~1時間半程度を1日2回が目安になります。
シベリアンハスキーは大型犬で力が強いため、引っ張り癖のしつけは重要です。
しつけが不安、うまくいかない場合はしつけ教室の利用も
どうしても飼い主自身で愛犬をしつけるのが難しいようなら、プロのドッグトレーナーに一定期間預けて、基本的なしつけをしてもらうのも良いでしょう。
しかし、預けたからといって、全てを人任せにして良いわけではありません。愛犬がしつけを教わるのと同様、飼い主さんもワンちゃんとの接し方を学んでいくようにしましょう。
しつけ教室は、愛犬のしつけをすべてお任せできる場所ではなく、愛犬と無理なく生活できる方法を一緒に学べる場所と考えてください。
まとめ
大型犬は成長すると力が強くなるので、しつけの重要さは小型犬以上といえるでしょう。
満足なしつけができないまま成犬になった大型犬は、成人男性でも制御が大変です。まして子どもや高齢の方の場合、ケガを負わせてしまう恐れもあります。
可愛い愛犬をそんな問題のある子にさせないためにも、今回の内容を参考にしっかりとしつけてあげてくださいね。
著者/ブリーダーナビ編集部