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動物が生きるためには、食事が欠かせません。しかし、老犬になるとさまざまな機能が衰え食欲も落ちていくので、それまでのような食事内容では不十分です。
今回は、高齢になった愛犬のために、どのような食事管理をするべきか、与えるフードや食事の与え方、介助について解説します。
高齢になると食欲がなくなるのはなぜ?
人間も高齢になると職が細くなりがちですが、ワンちゃんも同様のことがいえます。
老犬になりさまざまな理由で食欲がなくなっていくので、状態に合わせて適切な食事を与えるようにしましょう。
老犬が食欲不振になる理由一覧
- 体と食の好みの変化
- 代謝の低下や運動量の減少
- 口腔内のトラブル
体と食の好みの変化
ワンちゃんにも食べ物の好みがあり、加齢や体の成長とともに変化していきます。
7~8歳頃であれば、代謝量は落ちるものの食欲はまだまだ健在なので、肥満には気を付けましょう。まだ体の変化は少ないですが、この頃からケアしてあげることをおすすめします。
より加齢が進み、ハイシニア期と呼ばれる年齢になると、味覚や嗅覚が衰えていきます。この時期のワンちゃんは、食べ物に対する興味が薄くなり食欲を感じにくくなるだけでなく、自力での食事が難しくなることも考えられるでしょう。
代謝の低下や運動量の減少
高齢になると運動量が落ち、新陳代謝が低下していきます。
それに伴い食欲もなくなっていく傾向にあります。
適切なシニアの食事量にはもちろん個人差がありますので、愛犬がどのシニアステージにいるのか確認して調整してあげるようにしましょう。
体や食事の変化もあまりありませんが、代謝といった体の内側は変化しているので、この頃からシニア向けのケアを始めましょう。
疲れやすかったり、食事するのが辛そうだったりと、体の内側・外側ともに変化が見られます。
口腔内のトラブル
ワンちゃんも高齢になれば、歯がや歯茎が衰えて、噛む力が弱くなってしまいます。
噛む力が弱くなると、硬いものが食べづらくなったり、細かくかみ砕くことが難しくなり、食べ物を飲み込むこともできなくなります。
そのため、結果として食事の量が少なくなってしまうので、愛犬に応じたケアをしてあげましょう。
状況別、ご飯の食べさせ方
ワンちゃんも高齢になると、さまざまな理由でご飯を食べなくなります。
では、食事をしなくなるのは、どんな理由でどのような対応が必要になるのでしょうか?
ここでは、食欲不振の対応について原因ごとに解説します。
食欲が減り、ごはんを食べなくなった場合
・姿勢の問題
老犬になると筋力が衰え、ご飯を食べる姿勢を維持することが難しくなり、食事をしなくなることがあります。この場合、食欲自体はあるので、楽な姿勢で食事が取れるように食事を入れるトレイの下に台を置くなどすると良いでしょう。
・口腔の問題
歯が抜けたり歯周病などの病気があることでも、ワンちゃんは食事を取らなくなります。
こうした原因の場合、歯や歯茎に負担がかからないよう、柔らかく食べやすいフードを与えてください。
・内臓の問題
高齢になれば内臓の機能も衰え、食べた物を消化する能力も弱くなります。そのため、老犬になっても変わらず成犬用のドッグフードを与えていると、消化器官に負担をかけてしまい、食欲を減退させることになるでしょう。高齢になり「食欲が落ちたかな?」と思ったら、ドッグフードをシニア用の物に切り替えてください。
・感覚の変化
年齢を重ねればさまざまな能力が衰えますが、ワンちゃんの嗅覚もその内の1つです。嗅覚は食べ物の美味しさを感じる重要な器官のなので、ここが衰えると食欲にも影響します。この場合は、普段食べさせているフードに嗜好性の高い物を混ぜるといいでしょう。
また、食事は温めることで匂いが強くなるため、食欲に訴えることができます。ただし、熱くしすぎると栄養素を壊してしまう恐れがあるので、人肌程度の温度が適温です。
自力で食べられなくなった
噛む力が飲み込む力が弱くなるなど、ワンちゃんも高齢になれば自力での食事ができなくなることもあります。
こうなると、飼い主さんが食事を手伝うことになりますが、普通のフードでは固いので、流動食を与えるようにしましょう。流動食は市販されていますが、普通のドッグフードを細かくすり潰して水と混ぜることで作ることもできます。
流動食を与える際は、シリンジ(針のない注射器)に入れて、喉に詰まらないよう口の端から少しずつ流し込んであげましょう。この時、ワンちゃんの頭を立っている時と同じ向きにすると、喉に詰まりにくくなります。
ただし、ワンちゃんはこうした行為にストレスを感じることもあるので、噛みついてくることもあるかもしれません。そのため、流動食を与える場合は愛犬の様子を見ながら少しずつ、嫌がるようであれば止めることも考えてください。
食後に吐き戻してしまう
嘔吐自体はそこまで珍しくありませんが、繰り返したり下痢を伴ったりするようなら食事を考えてください。
老犬が食事後に吐いてしまう理由として、消化機能や飲み込む力の衰えが考えられます。
食べた物を消化しきれず吐き戻してしまう場合は、消化しやすいフードを与えると良いでしょう。また、飲み込む力が弱くなっているようなら、流動食を与えてください。
ただし、嘔吐が続く、元気・食欲がない、下痢しているなどの症状がある場合、早めに獣医さんに診せるようにしましょう。
食事後すぐにごはんを要求してくる
ご飯を食べさせても、すぐまた食事をしたがるようなら認知症の疑いがあります。もしも認知症であれば、食事の問題ではないので、ご自宅では対処のしようがありません。速やかに動物病院に連れて行きましょう。
また、認知症以外にもただのワガママで食事を要求している場合もあります。食欲が旺盛なのは良いことですが、食べ過ぎは肥満の元です。
対処法としては、1回の食事量を減らして回数を増やすと良いでしょう。
肥満が気になる
老犬になると筋肉量や運動量や減ってしまい、基礎代謝が落ちて肥満になりやすくなってしまいます。肥満予防のために、落ちた基礎代謝に応じて1日の摂取カロリーを調整してあげましょう。また、老化によるホルモンバランスの崩れも体重増加の原因になります。
肥満はさまざまな病気のリスクを上げ、足腰への負担を大きくするので、無理のない範囲で運動を続け、場合によっては獣医さんに診てもらってください。
老犬の食事回数やポイントは?
高齢になると、一度に食べられる食事量が減ってしまいます。そのため、一度に与える食事量を減らす代わりに、1日の食事回数を増やすことで対応してください。
1日の食事は3~4回に分ける
ハイシニア期の老犬になると、1度に食べられる量が少なくなります。もしも、1日に必要なカロリー摂取量が不足するようなら、フードを高カロリーなものに切り替えるといいでしょう。そのうえで、衰えた消化機能に合わせて栄養バランスを考慮しながら、1日に必要な量を3~4回に分けて与えてください。
老犬にこそ良質なたんぱく質を
老犬の食事は、ワンちゃんに最も必要な栄養素であるたんぱく質について考えるようにしましょう。
成犬が1日に必要なたんぱく質は、人間の4倍以上といわれています。高齢になれば若い頃ほど栄養は必要ないと思われがちですが、近年になり老犬の方が成犬より多くのたんぱく質を必要とすることが分かってきました。
筋肉量維持のために、10種類ある犬の必須アミノ酸がバランスよく摂取できるよう、良質な動物性タンパク質が含まれたフードを与えましょう。
与えるカロリーには注意
7~8歳頃は基礎代謝が減るので、低カロリー低脂肪の食事を心掛けましょう。それまでと同じ食事量だと、肥満になる恐れがあります。
肥満は関節や心臓に負担がかかるので、病気やケガの原因になるかもしれません。
「食べすぎかな?」と思ったら、食事内容を見直してください。
食べやすい環境整備を
高齢になればさまざまな機能が衰えますが、消化器系もその1つです。さらに、喉の渇きを自分で感じる力が鈍くなり、あまり水を飲まなくなります。こうした問題をまとめて解決するために、水分の多いフードを用意してあげましょう。消化に良いだけでなく、脱水症状の予防にもなります。
また、老犬は筋力が衰えるので、食事のために頭を下げる姿勢が負担になってしまいます。
少しでも楽に食事ができるように、台の上に食器を置いて、少し高い位置に置くといいでしょう。これにより、飲み込む力が弱くなっても飲み込みやすくなるというメリットもあります。
まとめ
老犬になればさまざまな機能が衰え、代謝が落ちることもり、成犬と同じ食事を続けるのは難しくなります。そのため、低カロリーかつ低脂肪で、品質の高いタンパク質が含まれた、シニア用のフードに切り替えましょう。また、食事の与え方も考える必要があるので、今回の記事を参考に、高齢になった愛犬の食事を工夫してあげてください。
下記ページでは食事以外の介護について詳しく解説しています。こちらも参考にしてみてください。
老犬の食事やトイレの介護はどうする?環境や必要なものを解説
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著者/ブリーダーナビ編集部